mission 2

5/11
前へ
/671ページ
次へ
◻︎◻︎◻︎◻︎ 「来てるか」 「アイツにしては随分早いスタンバイだぞ。さっさと来い。そういや試験どうなった?」 「問題ない。留年は免れた」  玄関で靴を脱ぎ捨てた八雲はロイに手渡されたヘッドホンをつけデスクチェアに座る。学生鞄を隣に置くとパチパチとパスワードを叩いた。  ブン、と音を立ててモニターに薄暗い部屋が映る。八雲は目を凝らしモニターの隅々まで見回すが何も見えない。小さくため息をつくと仕方なく口を開いた。 「こちらNo.8。遅れて……その、すまない。いるんだろ」 「やーーーっと、お出ましかよ。そっちからアポ取っといて遅刻たぁいいご身分だな、チェリー? 寝てたわ」 「……変わらずで何よりだ、顯龍(シェンロン)。とりあえずそのふざけたあだ名をやめろ」  ガチャガチャと派手な音を立ててモニターに戻ってきた白髪の男相手に八雲は小さく舌打ちをした。  No.4、(ニイ) 顯龍(シェンロン)。NeRoで唯一の医者であり科学者だった。いつも薄暗い要塞のようなラボに篭り、日々研究に明け暮れている。  ボサボサの白髪と萎れた白衣は変わらず健在で清潔さのかけらもない。タバコの吸い殻が灰皿の中で山を作り、ポロリとこぼれ落ちた。こんな姿を見て彼を医者だと信じるものは誰1人としていないだろう。 「八雲から連絡してくるなんて初めてじゃねぇか。光栄だね。なんだ、誰か孕ませちまったか?」 「ふざけっ」 「旭小夏に関するデータはお前にやったのが全てだ。諦めな」 「!」  八雲は大きく目を見開いたが、すぐに眉間に皺を寄せる。気だるそうに背もたれに体重を預けた顯龍は、縮れたタバコを指で引き伸ばしながら愛用のジッポーで火をつけた。 「……そんな嘘はもう通じない。ボスが、お前達があえて俺に情報を渡していないのは知っている」 「ほう?」 「旭はボスと同じ能力を持っている。BianCoが狙う理由はそれだ。5年前ヒューストンの研究所爆破事件、彼女の両親が関与している。あの研究所で作っていた……確かに“黒い箱”と言ったな。正体は俺にも分からないが、いくつもの組織が奪い合っていた。彼女は、恐らくそれと……無関係じゃないんだろう?」
/671ページ

最初のコメントを投稿しよう!

576人が本棚に入れています
本棚に追加