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目が痛い。
喉奥が痛い。
肺が痛い。
胸も手のひらも、どこもかしこも痛い。
体全体がが不条理に悲鳴を上げている。
なんで彼女なんだ。
世界にはこんなに人間で溢れてるのに、なぜ彼女が選ばれてしまったんだ。
今日情報を奪うことができたら、何かしら彼女の助けになると信じて疑わなかった。
この2つの銃を握り敵を殲滅し続けることが彼女を守ることに繋がると信じて疑わなかった。
俺は馬鹿だ。
なんて愚かで、傲慢で、無力なんだ。
戦闘しか能のないこの汚い両手じゃ、もうどんなに足掻いたって彼女を助けられない。救えない。
本当に消えてしまうのか?
俺の名前を呼ぶあの声も、
触れた時に見せるあの照れくさそうな仕草も、
何もかもを溶かしてしまいそうなあの笑顔も。
全て跡形もなく消えてなくなるのか?
今まで何人もの人間の死を見てきた。ここに来るまでは、自分もそう遠くないうちにそちら側へ行くんだと常々思っていた。
生も死も、常に隣り合わせでそこにあるもの。感傷に浸ることも特別な恐怖を抱くこともなかった。
背後に積み上がる屍の山の中に彼女が1人仲間入りするだけ。ただそれだけ。
なのにそれを想像するだけで、吐き気がするほどの恐怖に襲われる。
嫌だ。絶対に嫌だ。
彼女を失うのが怖い。彼女のいない世界を想像するだけで足の感覚が消える。
嘘だ。嫌だ。誰か答えてくれ。
なんとか言ってくれ。
俺はこれから一体どうしたらいい。
「旭っ……」
これは罰なのか。
自分が生きるために、何人もの人間をあの世に送ってきた俺への……
駄目だ、目の前がもう、
真っ暗だ。
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