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ガララララ!
「小夏ー! ごめん遅くなって! ケーキ食べた? 一緒に食べ……よう、ってなんだ。相馬いたんじゃん。てかあんた達、玄関で何してんの?」
小夏は極度の緊張に耐えられなかったのか、全身を真っ赤にしたままぐるぐると目を回し、遂にはくしゃりと膝を折って倒れこんでいた。
思わず腰を抱きとめた八雲だったが、今自分が何をしようとしていたのかをふと思い出し、爆発したように顔を赤らめる。
そんな2人の様子を見つめながら向日葵はニヤリと笑うと、顎に指をわざとらしく添えた。
「あっはー……もしかしてもしかしなくても、私お邪魔だった?」
「いや、そんなことは……それより旭! しっかりしろ」
立ち上がらせることが困難であると判断した八雲は、仕方なく小夏の側に跪き、背中を支えた。
どうやら小夏は既に意識を手放しかけているらしい。真っ赤な顔をしたまま焦点の定まらない目で周囲をぐるぐると見渡していた。
「なぁに? 相馬、小夏に何しようとしてたのー?」
「何って、べっ、別に俺はまだ何も!」
「まだ?」
「ぐっ……」
「下世話なことは聞かないけど、小夏はキスもその先も、何から何まで未経験よ。そこんとこ、分かって扱ってやってよね」
「う、嘘だろ……」
「初恋があんただって言ってるのに、嘘もクソもあるか、バカ。小夏! しっかりー!」
そう言うと向日葵はペチペチと小夏の頬を叩いた。
「あれ……向日葵ちゃん? なんで……」
「気づいた? 父さんが今日小夏が誕生日なのに1人だっていうから、部活終わってそのまますっ飛んできたの。まぁ、1人じゃなかったみたいだけd」
「たっ、誕生日ぃ?!」
「相馬、あんた今日物凄くうるさい。知らなかったの? 彼氏なのに最低ね」
「向日葵ちゃん! 相馬君には私が内緒にしてたんです! だから責めないで下さい……」
彼氏という単語に頬を染めながらも、小夏は懇願するように向日葵の袖を掴む。当の八雲はいくつもの衝撃的事実に目を見開き、ただただ青ざめていた。
「分かった分かった。小夏はずっと相馬が好きだったもんね。……でもよかった。やっと伝わったみたいで。相馬も! お互いにね」
向日葵はホッとしたように肩を下げる。そして小夏の頭を撫で、放心している八雲の肩をポンと叩くと、防具を背負い直し玄関へ向かった。
「ひっ、向日葵ちゃん! もう帰ってしまうんですか?」
「ナルじゃないんだから空気くらい読めるっつーの! 週明け質問攻めにしてあげるから覚悟しなさいよ〜」
向日葵は小夏にパチンとウィンクする。そして八雲の方を見て下世話な笑みを浮かべると早々に帰って行ってしまった。
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