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「そんな乱暴にするな。目が腫れる……」
八雲はそっとしゃがみこむと壊れ物を触るように小夏の腕に触れ、代わりに自分のハンカチを当てがった。
小夏はされるがままに涙を拭いてもらい、合間合間に八雲の顔を覗き見る。何故か彼の額からはたくさんの汗が出ていて、眉間の皺は更に深くなっていた。
一目で八雲が女の子の扱いに慣れていないことがわかる。なのにそんな不器用な彼に小夏はたった1日で2度も助けてもらい、優しさを与えてもらった。
ふわん
小夏のお腹の底には何かあたたかくてふわふわするような感覚が芽生えていた。それは今まで感じたことのない、初めての感覚。
ドキドキと心臓の音が耳まで聞こえてきた時、小夏は八雲と初めて出会ったあの時のように八雲の両手をぎゅっと握り込んでいた。
「好きです……!」
「は?」
カチリ
八雲の思考が完全に停止した音が聞こえるほど、八雲は絶句した表情のままピクリとも動かなくなってしまった。
頬を赤らめ、潤んだ瞳をキラキラと輝かせている旭小夏を残して。
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