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「私相馬君が好きです!」
聞こえなかったと思ったのか、小夏は再び声を大にして思いを伝えた。
八雲は今や全身に冷や汗をかいていた。
目の前の女子は瞳を輝かせ、頬を紅潮させている。明らかに興奮状態にあり、きっと今、彼女は普通ではないはずだ。おそらく頭に強い衝撃を受けたせいに違いない。
八雲は脳内で何とか彼女から受けた告白を否定しようと必死になっていた。きっと何かの間違いだと、そういった結論に結びつけるために。
しかし当の小夏はそんな八雲の努力をいとも簡単に打ち砕いた。
「突然すみません……だけど私相馬君が好きだって思ったんです!本当に……」
「その……恐らくだが君は頭を強く打っていて何か強い幻覚でも見」
「見てません!」
もはや何を言っても無駄だとしか思えないほど小夏の瞳は強い意志に満ち溢れている。まるで初めて恋を知った少女のよう。八雲は脳内で髪を鷲掴みにし、引きちぎれるほどグシャグシャと掻きむしった。
「相馬君はとても優しいです。こんな私に親切にしてくれて……」
「それはたまたま君が」
「きっととても心が綺麗な人に違いな」
「違う!!」
八雲は突然先程までとは違った強い口調で弾かれた様に小夏の言葉を遮った。思わず小夏は言葉を飲み込み、口をつぐむ。
八雲の顔は何か焦っているように不安定で、肩で息をしていた。
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