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「なかなか酷い男だなお前」
「五月蝿い。報告書が溜まってるんだ。邪魔するな」
「へぇ、なんて書くんだ?ターゲットに馬乗りになり、逆に守られ、最後には泣かせましたーってか? そりゃボスもお喜びになるだろうよ」
八雲は振り返りギロリとロイを睨み上げた。八雲は拠点としているアパートまで帰って初めて、自分の通信機がホルスターの中でオンのままになっていることに気づいた。事の次第は全てロイとエリザに筒抜けだったのだ。
まるで地獄だ。
八雲は自分への不甲斐なさで今にも死んでしまいそうだった。現在はエリザが小夏を尾行し自宅までの道のりを見守っている。
本当は自分がすべき任務なのに。
今の貴方には無理だとエリザに諭され、八雲は仕方なくロイの待つアパートに帰宅した。
そこからずっとネチネチネチネチと嫌味のようなからかいを受けつつ溜まった報告書を書いている。
じゃあどうすればよかったんだ?こんな可愛い女子に告白を受けるなんて光栄だ。まずは友達からでどうかな?なんて手の甲にキスでも落としてくればよかったのか?
馬鹿らしい。プレイボーイじゃあるまいし、そんな頭の軽い行為などロイでなければできるものか。
八雲は簡潔に事実だけを報告書に打ち込み、あとはどうにでもなれと苛々した指先でエンターキーを押した。報告書を乗せたメールはボスの元へ滞りなく送られる。八雲は小さくため息をつきノートパソコンを閉じた。
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