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「ほれ八雲、見てみろ。お姫様のご帰還だぜ。なんだよ……びしょ濡れじゃねぇか」
デスクチェアで寛いでいたロイは自らのデスクに用意したいくつものモニターを前のめりになって凝視していた。
それを見て八雲は唖然とした。モニターの中には玄関で靴を脱ぐ旭小夏がいたのだ。
他のモニターにも恐らくだが旭家の周囲、及び内部が映されており、玄関にリビング、寝室、更には浴室からトイレまで。
「これは……お前が?」
「そうさ。お前が学校に着いてからすぐ自宅へ侵入して内外全てに小型カメラと盗聴器を取り付けた。1つ助言しとくとあの家の防犯対策はゼロだ。ザルだ。まぁお陰様で楽に侵入できたわけだが……これでこの家はどんな要塞よりも安全になったし、監視もし放題というわけだ!」
ロイは机をバシンと叩くと、くるりと振り返り自慢げに両手を広げた。しかし八雲は冷え切った瞳でロイを見つめるだけで、その目はまるで変態やゴキブリを見るそれと同じだった。
「……相手は未成年の女子だぞ。何を考えている」
「お前こそ何言ってるんだ? ボスからの命令はなんだ? 旭小夏の護衛だ。このくらいしないといつBianCoに狙われるか分かんねーだろ。仕事だ、割り切れよ」
ロイは飽き飽きとため息をつくと、またくるりとチェアを回してパソコンに向かってしまった。
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