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「帰ったわ」
「おお、会ったか? 糞真面目な堅物野郎に」
「ええ。ロイ、八雲をからかうのもいい加減にしなさい」
「俺のせいじゃねぇよ。勝手に出て行きやがったんだ」
「どうでもいいけど……また部屋で吸ったわね? ここは禁煙よ! せめて換気扇の下に行って」
「へーへー。どいつもこいつもお堅いやつらばっかでこっちまで石になっちまいそうだ」
ロイはべーっと舌を出し、机の上に置いていたタバコの箱を再びポケットの奥深くに隠した。
「……なんで俺なんだ、だとさ。何故護衛なんかしなければいけないんだって言ってた」
「まさかあなた、言ったんじゃないでしょうね?」
「言ってねぇよ。ボスに殺される」
ロイはエリザに背を向けたまま、手で銃のポーズをして自らのこめかみに当ててみせた。
「ボスは八雲に普通の生活を経験してほしいだけよ。もし旭小夏の中にBCが眠ってるって知ったら完全に仕事モードになってしまうわ。八雲はBCが何かすら知らないけれど……」
「手足縛って拘束しとけばいい、なんて言いかねないもんなアイツ。いっそ殺せなんて言い出すかもよ」
「もう八雲はそんな事言わないわ。NeRoに来てから随分と変わったもの……」
エリザは思い出していた。
たった10歳で何のためらいもなく拳銃を扱い、息をする様に人を殺すかつての八雲の姿を。傷だらけの両腕、薄汚れた布1枚を纏い眉ひとつ動かさず淡々と人を殺し続けていた。
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