mission 3

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 彼はそれしか生きる術を、生きる理由を知らなかった。殺さなければ殺される。殺さなければ生きられない。殺さなければ価値がない。そこには善悪なんてものは存在しなかった。  もし何も知らない純真無垢な天使が銃を持てば、こんな風に人を殺めるんだろうか。エリザは何か神聖なものでも見ている気分だった。  そして同時に得も言われぬ、身の毛がよだつような恐怖が身体中を駆け巡ったのを覚えている。自らも同じ同業者であるにもかかわらず、10も歳下の子どもが目の前で同じ事をやってのけるのを見るのは胸が軋む思いだった。  八雲と再び再開したのは5年後、ボスがNeRoの一員として連れ帰ってきた時だった。何故か八雲を放っておけなかったエリザは何かと世話を焼き、それからずっと彼を弟の様に扱ってきた。 「ボスもお前もちょっと八雲に過保護になり過ぎちゃいないか? ほっときゃいいんだよ。八雲の道は八雲が決める。男はそんなもんだ」 「最後に決めるのは八雲よ。でもあの子はその選択肢すら知らない。もちろん彼女の保護が第一優先よ。けれどその時が来るまでは……」 「No.4がBCの破壊方法を見つけるまでは、な。いいさ、それまでは八雲のワクドキ学園生活を見守るさ」 「(ニイ)ドクターね……働いてるのか死んでるのか分からない人だけど、仕方ないわよね。彼しか任せられる人がいないんだから」  エリザはため息混じりにそう言い残し、バスルームに消えていった。  一方のロイは既に興味をモニターに移している。小夏の自宅前に到着している八雲をモニター越しに眺め、お手並み拝見といったように両手を擦り合わせると、ニタリと口角を上げた。
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