mission 3

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「そこで待っててくださいね。すぐに着替えとタオルを!」 「構わない、俺はすぐに帰る……から……」  八雲の言葉は一目散に駆けていった小夏の耳には一つも入らなかった。八雲は仕方なくその場に立ち尽くす。  畳の和室に小さな仏壇と円形のいわゆるちゃぶ台があり、そこにはぐっしょりと濡れた学生カバンが立てかけられていた。本当に傘もささずに帰って来たのだと思い知らされる。  得も言われぬ罪悪感に苛まれていると、仏壇に飾られている小さな遺影と目があった。恐らく小夏の祖母だろう。笑った時の目元がそっくりだった。  ボスからの資料で現在小夏は一人で親族はなく、両親共に他界していると記憶にある。ここに遺影として飾られているということは祖母も亡くなっているということだ。  正直自分も親や親族の存在を知らずに育ってきたが、NeRoに来てからは常に周りに誰かがいた。それは口煩いロイであったり姉のようなエリザだったり。小さなボスもずっと自分を気にかけてくれている。  そもそも寂しいや悲しいといった感情を久しく感じておらず、もう欠落してしまったのではないかと思っていたが、彼女一人きりでこの一軒家で毎日を過ごすのはどんな気持ちなのだろうかと考えずにはいられなかった。
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