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「お待たせしました! ちょっと着替えが見つからなくて……前買ったジャージがサイズオーバーだったのですがこれ入りますか?」
「構わない。俺はすぐに帰るから」
「か……帰られるんですか? 一緒に食べないんですか……?」
小夏は持っていたジャージをぎゅっと握りしめた。顔には大袈裟にも絶望が張り付いている。八雲は先程小夏の置かれた境遇を想像したばかりで、小夏の寂しそうな顔を見てしまうと結局それ以上自分の意思を押し通すことができなかった。
「じゃあ……遠慮なく」
「どうぞどうぞ! 合えばいいのですが……はっ! ちょっ……ちょっと待ってください! 私は向こうでっ、向こうに居ますから!」
八雲は頭にいくつかのクエスチョンマークを浮かべた。小夏は目を伏せて後ろを向き、こちらに手を突き出してバタバタしている。耳が赤い。八雲はもう既に上半身の衣服を脱ぎ捨てていたのだが、これがまずかったのかと気付いた時には時すでに遅しだった。
八雲の普通は小夏のような普通の女の子とは違う。八雲はこれは面倒だな、と思いながらも次からは気をつけようなんてらしくない事を駆けていく小夏の後ろ姿を見て思うのだった。
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