mission 4

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「ごちそうさまでした。お茶どうぞ」  八雲もつられて手を合わせていると、目の前には取っ手のない細長いコップが置かれた。中には綺麗なグリーンの液体が温かい湯気を出して揺らいでいる。 「緑茶ですよ。飲んだことないですか?」 「あぁ、あまり」 「少しだけ苦いですが甘みもあるんですよ。食後にはこれが一番です。熱いですから気をつけて」  どうやらこれは湯のみ、中の液体は緑茶というお茶である事を八雲は初めて知る。何度か息を吹きかけて一口飲むと、今まで食後にはブラックコーヒーを流し込んでいた八雲にとって目から鱗の代物だった。確かに苦いがほんのり甘い。口の中も綺麗さっぱりだ。  今度からはこれにしよう、と八雲は脳内メモに緑茶を書き入れた。 「今お茶菓子を用意しますね。ゆっくりしててください」  そういうと、小夏は調子よくぱたぱたと台所へ消えていった。  八雲は最初は正座をしていたものの、今は足を崩して胡座(あぐら)をかいていた。ずずっと緑茶をすすり、ほーっと息を吐く。畳と優しい線香の香り。今八雲はこの部屋がロイ達に監視されているのも忘れ、しっかりくつろいでいた。  こんなに時間を忘れ頭を緩ませて過ごしたことがここ最近あっただろうか。いや、確実にここ数年はなかった。  たまにはこんな事も、悪くはない。  溢れんばかりにお菓子を入れたお盆を持ってこちらに歩いてきた小夏を見て、八雲はポツリと心の中で呟くのだった。  その時。  八雲の心臓が一瞬にして凍りつく。  小夏の右大腿から突如赤い点が現れ、それは小夏の体を這うように上へあがっていった。本人は気づいていない。  赤いレーザーサイト。  それに反応した八雲は机を飛び越え小夏の頭を腕でかばい、勢いよく地面に伏せさせた。
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