mission 1

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「はっ、そっちから来たなら好都合だ! おいてめぇ、こないだは散々コケにしてくれたな!」  大河が恐怖を叱咤するように声を上げたが、聞く耳を持たない八雲はスッと大河の隣を素通りする。慌てて大河が振り返ると、八雲は小夏の目の前に立っていた。 「すまない。普通に話しているだけなのか判断していたら遅くなってしまった。怪我はないか?」 「相馬君こそ! 飛び降りるなんて……心臓が止まるかと思いましたよっ……」 「俺は見ての通りだ。慣れている。旭、少し下がっておけ」  八雲はそっと小夏を脇に誘導するとくるりと振り返った。そこには先程小夏に向けられていたような穏やかな目はない。明らかに暗殺対象に見せるソレと同じものが大河に向けられていた。 「話は聞いていた。身に覚えはないが俺に恨みがあるようだな。俺を呼び出すために旭を餌に使ったとしたらそれは正しい。褒めてやろう」 「は?」  大河は首を傾けた。何を褒められたのかは分からないが、明らかな侮蔑の色が滲んだ言葉尻に思わず口角をひくつかせる。 「ただ、下級生の女生徒1人に対して1、2、3……6人か。大仰だな。三流のすることだ」 「てんめっ」 「時間がない。次は古典のテストの返却だ。遅れるわけにはいかないからな。まとめてかかってこい」  八雲は中に着込んだシャツの第1ボタンを外すと学ランを脱ぎ、背後で固まっている小夏にそれを預けた。 「相馬君、暴力はダメです!」 「ダメ?……なのか?」 「もちろんです! お話し合いをして、そして……いえ、それ以前に暴力沙汰になって相馬君がお怪我でもしたら、進級に響いてしまったら、私、私……っ」  学ランを抱きしめ顔を歪ませる小夏を見て八雲はぽりぽりと頭を掻いた。素人6人相手に怪我もクソもないのだが、本気で自分の身を案じている小夏を無下にすることはできない。  それに進級の話は到底無視できるものではなかった。
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