帰国しました

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帰国しました

「手術は2日後。術後の経過を見て、退院することになると思うけど」 瑠音は俺の説明を静かに聞いている。 義母の手術はベテランの先生にお願いすることにした。 俺も経験値は積んで自信はついてきているけど、手堅い方を選択させた結果だ。 久しぶりに会った瑠音は、正直ベースでキレイになっていた。 葉琉(はる)の会社で働いているということは、勿論、二人は付き合っているってことなんだろうけど。 あれだけ断ち切ったはずの二人の仲だったのに、どうやって復活させたのか。 瑠音の薬指にはちゃんと指輪がしてあるし。 葉琉(はる)が挨拶に来るというのも親父経由で聞いていた。 実家に寝泊まりするのかと思っていたら、ホテルに滞在するって、きっと俺を警戒しているんだろうな。 いろいろ面白くなかった。 瑠音が大学卒業前に友達とのルームシェアを選択して、実家を出て以来、二人で会うことはなくなっていたけど。 かつて瑠音との結婚を考えていたのは事実だし、ただ、いつの頃からか、その存在を重く感じることが増えていったのも事実。瑠音といれば、どうしたって俺はお兄ちゃんのポジションになってしまって、その責任感めいたものがうざったかった。 いきなり語学留学と称して、葉琉(はる)の所に行ったのは驚いたけど、帰ってきた瑠音の様子がひたすら気に食わなかった。 俺といる時よりも、はるかに幸せそうな瑠音。 俺が嫉妬していたのは葉琉(はる)になのか、それとも瑠音にだったのか。
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