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腕を払われた瑠音はバランスを崩した。
かなりの衝撃だったんだと思う。
それでも瑠音は葉琉の足に縋りつく。
ほとんど、その腕を蹴り上げるようにして、葉琉は部屋を出て行った。
残された瑠音のこめかみの所から流血している。さっき、蹴り上げられた時に付いた傷。
また病院に逆戻りだな。
ちょっとだけ抜かったのかもしれない。
慎重すぎるぐらいの瑠音の行動に、監視役を任されていた俺は安心していた。
あと数日のことだったし、隙が出たか。
葉琉はきっとベットメーキングを直す前に部屋に着いて、異常を察していたところに俺たちと遭遇したわけだ。
「瑠音、また病院に行って、頭の傷、診てもらわないと」
泣き続ける瑠音は首を振り続けるばかり。
とりあえず止血だけでもしないと。
これで二人の関係が終わるとは思えないけど、良くない状態であることは間違いない。
葉琉は翌日の始発の便でイギリスに戻ってしまい、結局、俺は葉琉と話が出来ずじまいだった。
瑠音は両親に葉琉が仕事の都合で来られなくなった旨、電話で伝えていた。
翌日、どうにか病院に連れて行ったけど、こめかみの傷は一生傷になるかもしれないと医者から言われてしまった。
これからの瑠音の処遇をどうするかが、当面の問題だろう。
「リアムさん、私、どうすればいい?会社はそのまま、働いていてもいいもの?」
さすがに、いくら葉琉だって公私は分けてくるだろう。
「確認取ってから、瑠音の今後のことは考える」
答えを保留にして、俺は蒼馬に会いに行くことを決めた。
こんな面倒くさい状況を作り出した本人を俺は許すわけにいかないんだけど。
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