とりあえずイギリスには戻りましたが

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とりあえずイギリスには戻りましたが

葉琉(はる)に瑠音の今後のことを問い合わせても、明確な回答はない。 ただ、日本にこのまま残していくのも気に入らないようだったので、懇意にしていた金融機関に出向という形で勤務先を変更することにした。 期間は3カ月。 その間に二人の関係がどうなるかだけど。 瑠音は俺の指示通り、イギリスに戻って、新しい勤務先で働いている。 仕事ぶりは概ね好評だ。 俺が鍛えたんだから、当たり前と言えば当たり前。 瑠音は葉琉(はる)には、あれ以来、連絡を直接取ることは止めたらしい。 何度か連絡したみたいだけど、葉琉(はる)とは話せなかったようだ。 また怒らせるだけだからって。 多分、こめかみの傷は消えないな。葉琉(はる)に付けられた傷。 指輪も俺経由で返して欲しいと言われ、預かる羽目になっているし。 葉琉(はる)は表面上は何事もなかったように仕事をしているけど、ただ事務作業をこなしているというだけなのはデザインの仕事の進捗状況の大幅な遅れ具合から明らかだ。さすがに、そろそろ次のシーズンの準備を進めたい。 「デザイン、進んでないの?」 ほとんど抜け殻だな。 「今日、瑠音に会って1か月分の業務報告を受けた。今の仕事に関心が高いようだね。向こうの会社の受けもいい。出向のまま転籍って話になったら、どう対処する?」 「傷は目立たなくなった?」 「気になるなら、直接聞けば?そんな腑抜けになっているのが社長だと、この会社の先行きは明るくないね。瑠音にも転籍を推奨しようか」 瑠音からの指輪返却の件を伝えたら、さすがに意地を張っている場合じゃないっていうのは分かったらしいけど。 「リアム、僕はどうすればいい?」 いちいち俺がアドバイスすること?
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