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なぜか、美少女( ※ 男)になってた
「うっ・・・」
頭痛がする。
瞼が目が開くのを拒んているかの様に重い。
そんな重い瞼をなんとか開くと。
「ここ、何処・・・?」
見知らぬ場所であった。
どうやら、僕は床の上で寝ていたらしい。
床は木製で、床に付いた手は少し砂かホコリで汚れていた。
ここが僕の自宅ではない事は確かだろう。自分の部屋であれば、床にカーペットが敷いてあるはずだ。
「動くな!!!」
その時、甲高い少女の声が響いた。
それは目覚ましアラームの様に、目覚めたばかりの耳にキンキンと突き刺さる。
しかしそのお陰で、意識がはっきりとしてきた。
数回程まばたきをして、目の前にある、ぼやけた物体へ焦点を合わせる。
すると。
「っ・・・!? ひぃっ・・・!?」
僕の目の前に突き出されていたのは、鋭い銀色の刃であった。
「少しでも下手な真似したら、容赦しないわよ」
「は、はい・・・」
ピンクの髪をツーテールに縛った少女が、右手に握る剣の先を、僕へ向けていた。
一体この状況は何なのか、僕にはさっぱりと理解できない。
僕はただの学生だ。
昨日僕は、学校から帰宅した後、いつも通りゲームをしてアニメを見て、適当な時間にベッドへ入って就寝しただけである。
命を狙われる様な事も、何か恨みを買う様な事も、一切身に覚えがない。
「えらく素直ね。それが逆に怪しいわ。正直に、正体を名乗りなさい」
しかしピンク髪の少女は、僕への警戒心を緩める事は全くない。
それどころか、鋭い剣先は更に僕の目先へと近付いてくる。
「ひぃ・・・!? な、なっ・・・!?」
あまりにも突然な出来事と、そして目の前に凶器を突き立てられている恐怖で、口が上手く動かない。
「ちょっと待ってくださいミナトさん。あまり乱暴は控えてください。まだこの子が敵であると決まった訳ではないのですから」
すると一人の少女が現れ、ミナトと呼ばれたピンク髪の少女を丁寧な口調で抑えた。
気付かなかったが、どうやら黒髪の彼女は僕の背後にいたらしい。
「あのね、ヒノは見ていないでしょうけど、私ははっきり見たのよ!? この子は高ランクの空間転移魔法を使用して突然この部屋に現れた! 間違いなく魔術師よ!」
「別にミナトさんの主張を否定するつもりはありません。ですが、この子はただ巻き込まれただけの一般人である可能性もあります」
(な、何言ってるんだ、この子達は・・・!?)
ミナトという名のピンク髪の少女は、今僕の事を「魔術師」と呼んだのか?
それに、空間転移魔法とも言った。
一体、なんなんだ、この子達は。
見た目は美少女だが、もしかして頭がヤバイ感じの人達なのだろうか?
何か、危ないお薬でもキメているのかもしれない。
「・・・そうね。確かにヒノの言う事も一理あるわ」
一理ある、と言うものの。彼女が剣を下す気配はない。
そして。
「じゃあアンタ。まず服を脱ぎなさい」
「え・・・?」
聞き間違いだろうか。
今、このミナトという少女は僕に脱げと言ったのだろうか?
「聞こえなかったの? 服を脱げと言ったのよ。武器を隠し持っていないか確かめる為にね」
どうやら聞き間違いではないらしい。
「え、え・・・? 服、ですか?」
「何恥ずかしがっているのよ。別に"女同士"で気にする事ないじゃない。それとも、やっぱり何か見られたらマズイものでも隠し持っているのね?」
「え、ちょ、ちょっと待って・・・!」
・・・女同士?
何かがおかしい。
僕は男だ。
間違いなく、男のはず・・・。
「・・・え?」
ふと横を向く。
部屋の窓に、自分の姿が映っているのが見えた。
・・・そう、本当ならばそこに映るのは、僕のはずだが。
何故かそこには・・・「見知らぬ少女」の姿が映っていた。
「え、なんで・・・?」
もう一度、窓を確認する。
ミナトと、もう一人ヒノと呼ばれた少女がいて、そして向かい合う様に僕・・・が映るはずの場所には。
やっぱり、見知らぬ美少女の姿が映っていた。
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