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「な、何よこの魔物は!?」
「わ、私も見たことない魔物です・・・!」
まるで深海から這い上がってきたかの様な、おぞましい姿の生物に、ミナトとヒノの二人も困惑した様子である。
・・・魔物?
あの生物を見て、二人は魔物と言った。
あんな生物見たことがない。
間違いなく、地球上の生物ではないだろう。
だとすると、あれは魔物なのだろうか?
薄々気がついてはいたが、もしかすると、この世界は・・・。
「さぁ、私の可愛い魔物ちゃん。周りにいる邪魔な兵士共を喰い尽くしなさい」
魔物が触手を蠢かせ、兵士達に襲い掛かった。
放たれた無数の触手が、一人、また一人と兵士達を捕えていく。
「怯むな!!! 魔物から距離を取り、魔法を放てっ!!!」
対する兵士達は、手のひらから眩い光を放ち始めた。
無数の光の弾丸が魔物に命中し、炸裂する。
「な・・・なんなのさ? 一体、何がどうなってるの・・・!?」
・・・魔法だ。
初めて見る光景だが、どうみてもそれは魔法であった。
やっぱり、この世界は現実ではない。
つまりここは、異世界なのだろうか。
「さて、お嬢さん達の相手は私がしてあげるわ」
殺人鬼の女性が腰の辺りからもう一本のナイフを取り出し、二本の刃を構える。
「くっ・・・!!!」
そして、ミナトのヒノへ襲い掛かった。
女性の振るう二本の刃と、ミナトとヒノの剣が高速でぶつかり合う。
ミナトとヒノは、左右から挟み撃ちを仕掛ける形で剣を振るうが、女性はそれを冷静に捌いた。
目で追うのがやっとな程に、速く激しい剣の攻防である。
「どうしたの? 二人ががりでもその程度?」
にやにやと余裕な表情で、二人の剣を捌いていく女性。
「それはどうかしら?」
ミナトが剣を振るう。
女性はその一閃をナイフで受け止めるが、しかし。
ミナトの振るった刃の動きとと平行するように、2本の光の線が走る。
「・・・ッ!」
その光の線が、女性の上着を切り裂いた。
続けてミナトの剣が振るわれる。
また刃と平行して2本の光の線が走り、女性の腕に浅い切り傷を付けた。
「へぇ、なるほど」
女性は一度大きく後退して二人から距離を取ると、腕に付けられた切り傷を確認した。
「これが私の魔法。一振りで3か所同時に切り裂く魔法の刃"三重想"よ。さて、いつまで余裕でいられるかしら?」
ミナトが女性へ剣を向ける。
「ふふふ。中々面白いじゃない」
そして、ミナトは女性へ接近すると"三重想"を繰り出す。
女性はその三本の刃を避け、時にナイフで受け止めていく。
この一瞬で"三重想"の軌道を見破ったのか、女性には傷ひとつ付ける事が出来ない。
「やるわね。けど・・・!」
だが、ミナトの振るう三本の刃のうちの二本、魔法により生み出されたのだろう光の刃が、炎に変化する。
そしてその炎が生き物の様に動き出し、女性に襲い掛かった。
「・・・っ!」
炎が女性の身体をギリギリで掠める。
「避けましたか」
炎が空中を泳ぎ、ヒノの手のひらまで移動する。
「これが私の得意魔法。魔法を"掴み"それを炎に変えて操る事が出来る"魔炎手"」
ヒノが手を翳すと、炎はまるで意思を持っているかの様に蠢く。
「さて、本番はこれからです。御覚悟を」
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