卒業モラトリアム

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 まず、これは私のため、ただの自己満足に、つらつらと殴り書いているに過ぎない、言わば独り言のようなものです。  それでもなぜ、こうして残すことにしたのか。心に大きくて暗い穴が空いてしまったと言う私に、敬愛する方のお一人が、こう言ってくださいました。 「埋められないものは無理をせず、あけて置いたらいずれまた、そのスペースに大切なものを置けるはず」と。  私は、そうか、無理に向き合おうとしなくてもいいんだと心軽くなり、このお言葉を身に染み渡らせました。本当にありがたいことです。そう、ここには何か他のものを入れる日が来る。  しかしながら、その穴を置いておくには少しばかり大きすぎたようで、通りすぎようにも跨ぐことができず、回り道しようにも、その穴のなんと幅の広いこと。穴というより地割れ、真っ二つです。向こう岸は遥か向こうでどうにも先に進めません。  それもそのはずで、心に穴が空くと言ったとき、他に思い浮かぶのはまず若い頃の失恋ですが、それも多く見積もってトータル五年といったところ。彼らを大好きでいる期間は十五年以上、しかもongoingなわけですから。  かといって立ち止まりたくもない、どうにか打開していきたい。私はせっかちなのです。  少し前に連載中のお話のほうで、箱になぞらえて書いた一節があります。作中の彼女は、箱にぐちゃぐちゃに詰めすぎて、閉まらない蓋が飛んでいかないように押さえつけている状態でしたが、私の場合、この大きくて暗い穴、もとい箱は、空っぽなのです。仕舞うべき大切なものはたくさん、そこかしこに散らばっているのに、私の手が止まっていただけでした。  だから、ここで、私の散らかった青春のページを綺麗に整理整頓して、仕舞って、きちんと思い出にしていきたいと思います。そうすれば、すぐそこにある新しい箱に、手が届くような気がするから。
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