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小学5年生のバレンタインデー。
この年も、彼女だけが知ることができるような方法で贈るつもりだった。
しかし……
僕は、男子生徒から質問を受けた。
一昨年は昨年は、彼女に逆チョコレートを贈ったのか、と。
そして、
今年は、彼女に逆チョコレートを贈るのか、と。
否定をすることもできた。
けれど、男子生徒は、同じクラスの仲間であり友人でもある。
否定をすれば、嘘を吐くことになる。
僕は、真実を答えた。
……
男子生徒は、教壇で暴露していた。
けれど、この結果を予知することができていたとしても、僕は嘘を吐かなかっただろう。
同級生達から、陰口を叩かれていることは知っていた。
今日、それらの悪言を、面と向かって浴びせられた。
間接的であるか直接的であるかとでは、受けるダメージが大きく違った。
……
そんな同級生達を引き受けたのは、彼女だった。
彼女は、男子生徒と教壇の前に立つと、言った。
「私がお願いしてるの。
――私はチョコレートが好きだから」
この言葉は、同級生達を戒め、教室内を収めた。
この言葉は、真実だ。
けれど……
もし、他にも真実があったとして、そちらの言葉を選んでいたとしたら……
きっと、認められなかっただろう。
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