0人が本棚に入れています
本棚に追加
●
高校3年生のバレンタインデー。
僕は逆チョコレートを、彼女に直接渡そうとしていた。
待ち合わせてはいない。
一方的に見付けようとする。
……
彼女を見付けた。
馴染みのない街中で……
見知らぬ友達と会話し、見知らぬ制服を着こなし、そして見知らぬ笑顔だった。
彼女が、新しい人生を歩んでいることを思い知った。
抱えた逆チョコレート、それは原点に還ったかのような作品だった。
小型のアルミカップに、これまでに作った各々のチョコレート菓子を収めている。
どうして、このような贈り物にしたのだろうか。
それは、彼女と会うから。
もしくは……彼女と会えなくなるから。
―――
この年、僕は彼女に逆チョコレートを贈ることができなかった。
最初のコメントを投稿しよう!