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高校を卒業する。
僕は、専門学校へと入学した。
彼女は、海外の大学へと入学した。
それを、本人の口からは聞いていない。
―――
専門学校1年生のバレンタインデー。
当然のことながら、僕は彼女に逆チョコレートを贈ることができなかった。
……そう、
逆チョコレートは作っていた。
―――
バレンタインデー翌日。
僕は、校内の空き教室で、友人と課題に勤しんでいた。
僕にとっては最も親しいこの友人は、女性だ。
けれど、友人以上の関係になることは無い。
明らかな理由が、この友人が同性を恋愛対象としていること。
その事実を、隠すことも気に病むこともしない。
ありのままの友人と接することは、心が楽だった。
そんな友人に、逆チョコレートの話をした。
笑ってくれて構わなかった。
むしろ、それが相応しいのではないかと思った。
けれど、友人は笑わなかった。
一途であると感心することも、想いは途切れたのだと同情することもしなかった。
僕との交友関係を解消することを望みもしなかった。
友人の第一声はこれだ。
「あんたは、彼女が好きなの?」
……
一瞬の憤り、そして諦め。
笑ったのは僕だった。
けれど、やはり友人は笑わない。
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