僕の話

20/20
前へ
/58ページ
次へ
● 専門学校2年生のバレンタインデー。 そして、成年となったバレンタインデー。 僕は、以前に暮らしていた、街外れの古びたアパートに来ていた。 見覚えのある扉。 飽きる程見たけれど、見ると安心する。 ……今は、知らぬ人が暮らしている、部屋の扉。 それを暫し眺めてから、身を翻す。 すると…… ――彼女が居た。 最後に見た姿よりも大人びた、いや大人らしい、彼女が、目の前に……。 真っ先に思ったのは、彼女に逆チョコレートを渡すことだった。 けれど、僕は逆チョコレートを作ってはいなかった。 僕は、彼女に謝った。 僕の代わりに、彼女が何かを差し出した。 それは…… 「チョコレート」 …… 僕は、彼女からのチョコレートに驚いた。 「バレンタインデーには、女の子が男の子にチョコレートを贈る。 それが、普通のことでしょう? ……いいえ。 これも、 普通じゃない。 "おかしい" ことだよね。 だって…… ――私と貴方は、<きょうだい> だから」
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加