私の話

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○○○ 小学校への入学を期に引っ越しをした、母と私。 それは、父を亡くして、身の回りと心の中がようやく落ち着いた頃のこと。 家賃が安いアパート。 私達が借りた部屋の隣には、両親とその息子という3人家族が暮らしていた。 同い年のその男の子が――<彼>。 生活をするため、私を養うため、仕事ばかりの母。 いつも家に居ない。 いつも私と居ない。 私はひとりっ子。 私はいつも独り。 そんな私の傍に、彼が存在するようになった。 流行病に罹り易くて、自分よりも遥かに小さな生き物を怖がる。 体も心も、強くは無い彼。 でも、体も心も、"あたたかい" 彼。 彼の手を引いて立ち上がらせてあげたい。 彼に「大丈夫」と言って慰めてあげたい。 彼に笑いかけて、彼を笑わせてあげたい。 彼は私に、それ以上の救いを与えてくれるから。 彼の両親が居ない時は、私が彼を守ってみせる。 ――― 私には、わかっていた。 言葉にはされなくても、伝わっていた。 彼は、私が 『好き』。 そして、 ――私も、彼が 『好き』 。
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