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「あの……好きな事をしていいって……何でも?」
「言っても、エッチな意味限定です。殴りたいとか金品を奪いたいとかの暴力的な願望は勘弁してくださいね」
「た……たとえば……」
これは夢だと自分に言い聞かせながら、彼女の胸に人差し指で触れてみた。
ふにゅん……と指先が何の抵抗もなく柔らかい肉の中へ沈み込んでいく。
「ん……くっ……」
斐月が少し歯を食いしばって、身を固くした。
僕は慌てて手を離す。
「ご、ごめん! やっぱり冗談だよね……気安く触って本当に……」
「いいんです! もう、ここまで奥手だと面倒臭いですね……私がしてあげます」
斐月は僕の言葉を強引に遮り、僕の首に両腕を回して顔を近づけてきた。
熱い吐息がかかったと思った時、彼女の唇は僕の口にぴったりと密着していた。
「……ちゅっ……んんっ……」
僕の乾いた唇に、潤った斐月の唇が押し当てられている。
甘い香りを含んだ熱い呼気が、僕の口内に流れ込んできた。
人生で初めてのキスが、こんな唐突に訪れるなんて。
幻覚だとしても、これほど生々しい感触なら、ファーストキスと呼んで良いだろう。
興奮して思わず舌を伸ばすと、斐月の舌とぶつかった。
唾液でぬめった舌粘膜が擦れ合って、ぴりっとした快感が脳に突き抜ける。
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