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「斐月さん……!」
僕は斐月が愛おしくなって、彼女に再び熱いキスをした。
斐月も自らしがみついてきて、強く密着しながら長い接吻に耽る。
そうして、本能の赴くままにその先へと踏み込もうとした時。
急に、静電気が走ったかのように空気がピリッと張り詰めた。
「何だ?」
天井を見上げると、そこには今まで無かったはずの黒い円が一つ浮き出ていた。
それは複雑な線が絡み合い、判読不能な呪文が刻まれた────魔法陣であった。
「ぎゃぁああああああああああ──────!!」
黒い魔法陣の中心から、軍服姿の女性が盛大に叫びながら落ちてきた。
「危ない!!」
僕は声を上げるが、その女性は床に衝突する寸前で宙に静止して、一拍置いてから、床に落下した。
それは僕が落下してきた時と全く同じ現象だった。
「チックショ──!! 何なんだよ、このクソが!!」
小麦色の肌とウェーブの掛かった長い黒髪が特徴で、イギリス陸軍グルカ兵の戦闘服を着たその女は、息を荒げながら、持っていたM590ショットガンのフォアエンドをジャキンッと前後させた。
僕は背後に斐月を避難させながら、咄嗟に両手を上げて敵意がないことを示す。
「やめろ! 落ち着け……!」
「何だてめえら……! いったい私をどうしようって……ん……?」
女性が何かに気付いて、顔の緊張を解いた。
僕も同時に、彼女の正体に気付く。
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