「ウェルカム」

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 僕は睨み合う双方の間に立って、両手を広げる。 「僕たちも、この空間にいきなり転移してきたんだ! 出口は無いし、場所も目的も分からない! 無駄な争いは止めてくれ!」  質問攻めに遭う前に先回りで叫びたてると、僕の顔をまじまじと見つめていた将校服の女性がフッと笑った。 「宇宙人というのは、わしらと同じ見た目をしとるんじゃなあ。やっぱりわしが普段から想像していた通りじゃ。なあ?」 「そうですね、クビキ様! 宇宙人は実在しました!」 「はぁ……こんな時までふざける気か? つくづく、お前には付き合ってられないぞ」  頭のおかしいリーダーと、それを崇拝するメンヘラ、そして嫌々付き合わされている友人という関係だろうか。  三人は立ち上がって、辺りを見回し始める。 「で……ここは何処なんじゃ? 教えてくれたまえ、宇宙人」 「さっき言っただろ!!」  僕が怒鳴った刹那、内海が短い悲鳴を上げた。 「お、おい! 見ろよ! 冗談じゃねえぞ……!」  その視線を追って、僕は再び天井を見やった。 「おい、嘘だろ……」  黒い魔法陣が、新しく増えている。  三つ、四つ、五つ……こうして眺めている間にも増殖し続けているのだ。  そして魔法陣の中から次々と、軍服を着た人間たちが悲鳴を上げながら落下してくる。  皆、サバイバルゲームの参加者たちに違いない。 「ははぁ、面白い事になってきたようじゃなぁ……」  将校服の女性が、狂気じみた笑みを浮かべた。  紅いカラーコンタクトを入れた瞳が、不気味に輝いている。  混沌に包まれていく白い空間を見渡しながら、斐月は険しい顔で言う。 「……とても嫌な予感がします」  斐月は、僕に視線を交わした。 「これから、今まで生きてきた中で最悪の事が起きると思います。  ────最悪の、サバイバルゲームが」 
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