「サバイバーズ・ゲーム」

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「サバイバーズ・ゲーム」

 最初は僕と斐月の二人きりだったこの空間は、今や数十人の軍服姿の男女が集結する物々しい場と化していた。  これから起こる事など知る由もないが、それが平和的なアクティビティになるとは到底思えない。 「だいぶ、賑やかになってきたねぇ」 「……そうだな」  僕は緊張しながら、隣に立つ会話相手に改めて視線をやる。  石鎚舞子(いしづち まいこ)。  黒いレインコートを羽織った、僕よりも背が高い女性。  目鼻立ちはモデルのように整った美人であるが、目尻が下がった瞳には少々不気味な雰囲気が仄見える。  赤のメッシュが入ったショートカットの黒髪に、大きな白いリボンを着けている。  石鎚とは初対面だが、彼女の方から馴れ馴れしく話しかけてきたので仕方なく付き合っている。  彼女はこの異常な状況下でもほとんど動揺することなく、むしろ笑う余裕さえ持って目の前の現実を見据えている。 「人間って面白いよね。異世界の誘拐犯さんから何の指示も要求もされてないってのに、既にあちこちで喧嘩が始まってるよ」  棒付きキャンディーの棒をガリガリ噛みながら、石鎚は嘲笑する。  彼女の言う通り、突然密室に監禁された恐慌から、至る所で小競り合いが起きていた。  出口を探すか救援を待つか揉めている所もあれば、水と食料を巡って激しく言い争っているグループもある。 「馬鹿だよねぇ。落ち着いて協力し合った方が解決が早いのに。こんな所でも醜く争って自分たちの首を絞め、破滅の道を走ってる。いつだってそう。世界の人間を皆殺しにするより、世界の人間を同じ方向に歩かせる方が難しい」  どうして今そんな話をしているのか分からず、僕は曖昧に「そうかもな……」と返事をした。  石鎚は鼠の群れでも眺めるような眼差しで集団を見やりながら、続けて言う。 「ねえ、竜崎。もしも奴らが持っているエアガンが、本物の銃だったら……何が起こると思う?」
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