「サバイバーズ・ゲーム」

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「おい……! どういう意味の質問だ? ふざけるのもいい加減にしてくれよ」  物騒な事を尋ねようとする石鎚に怒ると、彼女は心底おかしそうに笑って僕の肩を撫でる。 「悪かったよう。でもね、これは至って真剣な話さ。ここに居る全員が、サバイバルゲームの参加者。全員の特技は、戦争ごっこ」  石鎚は涼しい顔で、壁に寄りかかりながら腕を組む。  言い回しが気に障って、僕はすかさず反論する。 「まさかサバゲーマーだからすぐ殺し合いになるって言いたいのか? ふざけんなよ。サバイバルゲームはスポーツだ。厳格なルールがあるし、安全第一。それを破るようなモラルの無い人間は即刻排除される。僕たちは戦闘狂じゃない」 「果たしてどうだか。一般人と何が違うか分かる? それは『敵に銃を向けて引き金を引く』という行為に、全員が慣れているってこと。ルールという枠組みの中で許されれば、敵を物理的に倒すことに長けた連中なんだよ。私たちは、玩具の兵士」  僕にすり寄ってきた石鎚は、クスッと淫靡な笑みを作って、羽織っているレインコートの内側を僕だけに見えるよう少しめくった。  赤色のメイド服を着ており、AK47アサルトライフルを黒革のスリングで吊っている。  首から下げた古風な金色の鍵のネックレスが、きらりと光った。  まさかこの場に、二人もメイド服を好むサバゲーマーが居るとは思いもしなかった。 「ひとつ提案だけど、竜崎……良かったら、私と組まない? キミは、他の奴らと違う匂いがするよ。面白いプレイが出来そう」  石鎚は、舌をぺろっと出して見せた。  まるで蛇の如く舌先が二股に分かれており、僕はぎょっとする。  ファッション目的で自ら舌を手術で裂いたスプリットタンの持ち主か。  蠱惑的な雰囲気に呑まれそうになりながらも、僕は冷静に取り繕って答える。 「……協力し合おうって意味なら、賛成だ。怪しい付き合いなら御免だけど、ここを脱出する為なら味方は多い方が良い」
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