「サバイバーズ・ゲーム」

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 僕はゆっくりと立ち上がり、天井を見上げた。  その場の全員が話を止め、不穏な顔つきで音楽に聞き入っている。  音楽が佳境に差し掛かると共に、天井全体が眩しく輝き始め、黒い人影が降りてきた。  それは、漆黒のドレスを身に纏い、顔の上半分を隠すマスクを被った一人の女性。  両腕を広げて衣装を優雅になびかせながら、一同を魅せるように宙をゆらゆらと舞う。 「なんだよ、あいつは……!」  内海はM590ショットガンの安全装置をパチンと解除して、構える。  その女性を見た僕は、ひとつの像を思い描いた。それは────死神。 <紳士、淑女の皆様。本日はお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。わたくしは、今回の進行役を務めます、ヴァルキューレと申します。  皆様は、栄えある【異世界サバイバーズゲーム】のプレイヤーとして、この世界に招待されました>  僕は驚愕して、咄嗟に自分の頭を押さえた。鮮明な女性の声が、頭の中に直接聞こえたのだ。  斐月も内海も、僕と同じ反応をしている。 <これから皆様には、またとない偉大な勝利と栄光を掴むため、このゲームに挑んでいただきます。皆様が日頃より培ってきた真の生存能力が、いま試されるのです。  異世界で英雄に成る夢を見たことはありませんか? このゲームなら、誰でも等しく英雄に成り上がるチャンスがあるのです> 「ゲームだって……?」  あちこちの床に、黒い魔法陣が次々と現れた。  そして魔法陣の中心から、アンティーク調の黒いスーツケースのような箱が浮き出てくる。 <それでは早速、皆様にスタートアイテムを支給します。アイテムボックスは、ここに集まった人数と同じ、六十個あります。この時点では奪い合う必要はありません。お一人様につき一個、お好きなアイテムボックスをお手に取り下さい。  なお、このスタート地点に限り、プレイヤー同士のあらゆる暴力行為は固く禁じられています。もし違反した場合、極めて重大なペナルティが科せられます。ご注意ください>  僕は思考を整理するだけでいっぱいになっていた。  いったい、何が始まろうとしているのか。  泳いだ視線の先に黒い箱がある。最初のアイテムが入っているという箱だ。  あれを取ったら、もう後戻りはできない。そんな予感を強く覚えた。
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