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僕は少しだけムキになって反論する。
「だいたい、斐月さんだって男たちに注目されたくてそんな格好してるんじゃ?」
「人として注目されたいのと、胸ばかりジロジロ見られたくない要望は別に矛盾しませんよね。そもそも私は、これを着てると男たちが露骨に油断するのが面白くて着てるだけですし」
「性悪……」
僕が嘆くと、斐月が急に身を寄せてきた。
何をするのかと思うと、彼女は急に僕の頬をペロッと舐めてきた。
「ひゃっ!」
生温かい舌で汗の雫を拭い取られ、僕は未知の刺激に飛び上がる。
宇宙人にでも遭遇したかのような眼差しを斐月に向けると、彼女は蔑むような視線を返した。
「お見通しですよ。童貞男子は、こーいうのに弱いんですよね」
「スキンシップって領域じゃないだろ今のは……!」
ここまで親密に異性と接した事など皆無なので、僕は逆に守りに入ってしまった。
こんな状況で平然とニヤニヤしていられるような胆力は無い。
すると斐月は、挑発的な微笑みを浮かべて、メイド服のスカートを少し上にずらした。
艶めかしいムチッとした白い太ももが目に入り、僕は絶句する。
「いいですよ。竜崎さんの好きなことしても」
「なっ……どうして急に!? 再会して間もないのに……」
「私の身と引き替えに竜崎さんが傷ついたのに、私は何も出来なかった。親なんか恐れずにもっと竜崎さんに寄り添うべきだった。私は本当に悪い女です。だから……竜崎さんに償いがしたいんです」
斐月にじっと見つめられ、僕は高揚する。
僕は幻覚を見ているのだろうか。段々とそんな気がしてきた。
現実の僕はサバイバルゲーム中の事故で頭を打って病院で昏睡中で、今いる世界は夢の中。
この不条理な状況を説明できるシナリオは、それしか思いつかない。
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