「サバイバーズ・ゲーム」

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 僕は慌てて、半透明の壁越しに斐月の様子を確かめる。  レッドチームのメンバーたちも他のチームに負けまいと、魔法陣で次々と出陣している。  最後尾に、囚人が看守に連行されているかの如く、男二人の間に挟まれて歩く斐月が居た。 「斐月さん……!」  僕の声が斐月の耳に届くことは無いのだが、彼女も僕の事を想ったのか、振り返って視線を合わせた。  彼女の両目は精悍に見開かれており、そこには深く強い意志が宿っていた。  この絶望的な状況に、最後まで立ち向かうという屈強な覚悟。  斐月は、諦めてはいない。 「……必ず、君を見つける」  僕は、小さく呟いた。  やがて彼女は横の男に背中を押され、そのまま魔法陣へと消えていってしまった。 「竜崎! どうすんだよぉ……!」  内海は今にも泣きそうな顔でしがみ付いてくる。 「悔しいが……出発する以外に選択肢は無い。僕らも早く動き出さないと、もっと抜き差しならない酷い状況に陥るかも。序盤の出遅れは危険だ」 「ゲームに参加するのは、他のチームを皆殺しにするって事なんだぞ……! 分かってんのか?」 「分かってるよ! 本物の殺し合いなんてやりたいわけないだろ! でも、このまま躊躇して棒立ちしているだけじゃ、何もならないのは本当の事なんだ。意地を張ってこの場所に留まっていたら、棄権と見なされて殺される可能性だってある。全員で生き延びるために、行動しないと」  それから僕は吹仲に視線を合わせる。 「吹仲先生。先生の主張に僕は同意しますが、女性陣は護身用に武器が必要なのも確かです。殺し合いには積極参加しないという意思は共有しつつも、武器は持っていた方が良いと思います。先生の身だって危ない」 「そうだな……分かった」  吹仲は苦々しい顔で、一度床に置いたアイテムボックスを再び拾い上げる。 「私自身、崇高な建前だけじゃ生きていけないと薄々は分かっていた。テネシー州へ旅行に行った時、暴漢に襲われかけた事がある。悪意を持った人間は、丸腰の人間を格好の獲物としか思わない」  自分の理想が叶わない事を嘆く苦い顔つきで、吹仲は言葉を続ける。 「平和になる方法は分かっているのに、誰もそれを実現できない。全く、嫌な世界だ」
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