第九話 忍者VS魔物使い

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第九話 忍者VS魔物使い

 さて、これでフォクロベアとかいう魔物は倒したけどな。  でもこれどうしようかな。すっかりバラバラだけど、こういうのって大体どの創作物でも素材とかが売却出来るんだよな。    熊なら毛皮とかか? 肉とか食えるのかな……熊の手は地球では高級食材だったけどな。  勿論、これをそのまま持っていくわけにはいかないけど、俺のアレを使えば、バレないように持ち歩くことは可能だ。  あそこなら時間の経過もないしな……親父からはあんま横着するなって言われてたけど、世界が違うし、こんなもの手運びじゃもっていけないもんな。 「よし、やるか」  俺は高速で印を結び、術を使用する。 「時空遁・次元収納――」  すると何もない空間にぽっかりと穴が開き、そこへ魔物の遺体が吸い込まれていった。  これは俺が独自に編み出した忍術だ。文字通り時空を操る忍術で、最初に見せた時は驚きすぎた爺さんがあの世に旅立ちかけた。  なんとか正気はとりもどしてもらったが、この忍術はそれぐらいとんでもないものらしい。霧隠れ一族の中でも知ってるのは爺ちゃんと親父だけだしな。  シャレにならないから滅多な事では使用するなと禁忌扱いにされそうな感じだったんだが、まあ、派手な忍術ならともかく、この程度は許して欲しいところだな、便利だし。  正直言えば、この時空遁を使えばもしかしたら地球に戻れたりしないかな? と思ったりもしたが、それはやっぱ無理だなと今は思っている。  時空ってのはかなり複雑で、様々な時空が複雑に絡み合っていて、しかも高次元な時空も関わってくるので、同じ世界内での移動ならともかく、全く異なる世界を行き来するのは自殺行為だ。  少なくとも何の情報もなく手軽に出来るものじゃない。失敗したら時空の波に飲み込まれて、別の世界に落ちるぐらいならまだしも、全身が別々の時空に取り込まれたり、ねじ切れたり、時空圧に耐えきれなくなって押しつぶされて死ぬなんてことも十分ありえる。  というか死ぬ可能性のほうが高い、先ず死ぬ、絶対死ぬな。うん、無理。  つまり、結局のところ戻るにしても地道な情報集めで何とかするしかないってわけだ。  あの皇帝の出来る限りのことをするなんて言葉全く信用に値しないしな、て――  そんな事を考えていたら、突如、俺の立っていった場所に無数の火の玉が飛来した。問答無用でけたたましい爆発音と幾重にも広がる炎の花。  発生した衝撃波で木々がなぎ倒され、ある程度開いていたその地形が更にふたまわりほど広がった。尤も、下草まで完全に焼き払われその部分だけが赤茶けた土が剥き出しの荒野の如く変貌した形だけどな。  全く、突然で驚いたぜ。俺じゃなかったら軽く死ねるぞ?  そんな事を空中を漂いながら考える。そしてすっかり荒れ果てた森の一部に着地した。    いまだ何箇所か炎が燻ってるな。薄まったとは言え煙も充満している。  全く焼畑でもする気かよ。だとしてもこんな時間にやり方が荒っぽすぎるぞ。 「これは驚いたよ。僕のペットに反応があったから、何かあるなとは思ったけど、それを倒しちゃった上、僕の魔法から逃れるなんてね」  で、気配は感じ取っていたけど、何者かが俺の前に姿を見せた。  驚いたがこいつ、でっかい猪の背中に乗っている。  見た目は、目深にフードを被っているからはっきりとは判らないな。格好としては濃緑色のローブ、長さは腰までだしハーフローブってところか。  それに同じく緑系のマントとぶかっとしたズボン、手には木製の杖だ。  ただ、魔力がそれなりに宿っているからそれなりの杖なんだろな。  とりあえず看破してみるか。 ステータス 名前:マビロギ レベル:36 性別:男 種族:人間 クラス:魔物使い パワー:150(+220) スピード:180(+250) タフネス:140(+280) テクニック:160(180) マジック:820(+120) オーラ :950(+100) 固有スキル 魔物隷属化、魔物強化、ステータス加算(魔物分)、魔物操作、魔物招集 スキル 身代わり、四属性魔法 称号 魔物を従えし者 装備品 ・魔寄せの杖 魔物を引き寄せる効果のある杖。魔物使いが持てば隷属化しやすくなり、魔力の回復量も向上する。 ・魔物使いのローブ 魔物使いがよく身につけるローブ、魔物からの攻撃を受けにくくする。魔法に対する抵抗力も上がる。 固有スキル ・魔物隷属化 魔物を隷属とし従わせる。 ・魔物強化 隷属化した魔物が一定範囲内にいる場合強化される。 ・ステータス加算(魔物分) 一定範囲内にいる魔物のステータスが主に加算される(+10%)。 ・魔物操作 隷属化していない魔物でも操作が出来る。 ・魔物招集 全ての隷属した魔物を一瞬にして招集する。 スキル ・身代わり 自分が受けたダメージを魔物に肩代わりさせる。 ・四属性魔法 火、水、土、風の魔法を使うことが出来る。 称号 ・魔物を従えし者 魔物関係のスキルの効果が向上する。 ステータス 名前:ジャイアントアースボア レベル:32 種族:魔物 クラス:獣系 パワー:650 スピード:520 タフネス:620 テクニック:300 マジック:380 オーラ :300 固有スキル 猪突猛進 スキル 土魔法、興奮、加速、急突進 称号 猪武者 固有スキル ・猪突猛進 直線に動く時の勢いが増す。 スキル ・土魔法 土魔法が使える。 ・興奮 獲物を見つけると興奮しステータスアップ。 ・加速 走り出してから更に加速する。 ・急突進 ノーモーションからの突進。 称号 ・猪武者 突進の威力が倍増する。  なんだこりゃ? おいおいマジか。さっきのフォクロベアより遥かに強いだろ。  ただ、これまでの話しぶりとクラスからして、この森にいる魔物の中にはマビロギの隷属になっているものも多いのかもしれないな。  特にステータスのプラスの数値を見るに、周囲に潜んでる魔物も間違い無しにこいつ関係のだろう。  面倒だな本当。 「それにしても、君一体何者? 変な格好して、おかしな仮面を被ってさ」  奴のステータスを確認しながら、考えを巡らせていると、マビロギの奴が質問してきた。  ふぅ、念のため、変装術も試しておいてよかったぜ。といっても武遁で仮面を作成して身につけていただけだけどな。  本来なら幻遁とか組み合わせると、更にバリエーションが増えるんだけど、俺はそっちあまり得意じゃないからな。  だから仮面で済ましている。とは言え、体遁で声も変えているから俺のことを知っているやつがいたとしてもバレることはないだろうけど。 「あ、もしかして君、例の召喚されてやってきた奴らの一人? 一応マジェスタ様からは逃亡しそうなやつがいたら逃がすな、捕まえろと言われているんだけどね」  あぶな! こいつあの爺の部下かよ! やっぱ変装しておいて正解だったな。  それにしても―― 「いや、捕まえるって、今の完全に殺す気だっただろ?」 「え~? でもほら、あの程度で死ぬ連中なら必要ないでしょ?」  でしょ? じゃねぇよ! 俺だから助かったようなもんだけど、あんなもの俺以外の連中が食らったら間違いなく死ねるぞ。  例えケントでも怪しいだろ。あいつは魔法に弱いし。下の猪でもかなり高いレベルだぞ。  そもそもこいつ、スキルからして結構厄介だ。身代わりなんて、近くに魔物がいる限り、こいつに一切ダメージが通らないってことだしな。  とはいえ、とりあえず、俺が召喚された中のひとりだと思われているのはまずいな、そこは否定しておかないと。 「大体召喚って何の話だ? 俺は見ての通り、ただのしがない旅人だぞ?」 「嘘つけよ」 「うお!」  地面が槍になって突き上がってきやがった。こいつ本当に捕まえる気あるのか? 「そんなおかしな仮面被ってるしがない旅人がいてたまるか」 「むぅ、ごもっともすぎるな」    やはりごまかしきれなかったな。ただ、旅人という点だけを怪しんでくれたようだが。 「怪しいやつだ、とりあえず捕まえるか殺すかして、連れて戻るか」  完全に二択になっちまったじゃねぇか。しかもなんとなくもう殺す気満々だろこいつ。 「……チッ、バレたら仕方ない。本当は何か珍しいものが召喚されるという噂を聞いて探りにきたんだよ。場合によっては金になると思ってな」  こうなったら破れかぶれで、なんとなくそれっぽい事を言ってやる。  いや、こんな話通じるのかって話だけどな。 「――やはりそうだったか。仮面なんか被ってるからおかしいと思った。最近近隣諸国で妙な盗賊団(・・・)が好き勝手してるらしいしね。ま、僕には最初から判っていたけどね」  えぇえぇ? いやいや信じちゃったよ。それどころか、何か僕実は気づいてたしみたいな空気出し始めたよ。まいったかと言わんばかりだよ。  絶対あのフードの中ドヤ顔だよ。  大体盗賊なんかと一緒にされるのは心外だ。心外だが―― 「だけど、そうなると殺すのはなしだね。ま、四肢切断ぐらいは覚悟してもらうけど」  つまり、さっきまで殺す気満々だったって事だろ。それ、全く気づいてなかったと言ってるのと同意義だぞ。そもそも口から出まかせだし。  とは言えこの設定は活かさせて貰うか。流石に帝国の関係者に今手を出すわけにもいかないしな。 「よしいけ! アースボア!」  すると、まさにノーモーションからとんでもない勢いで巨大な猪が突っ込んできた。    まあ、それでも俺、反射神経いいから避けたけどね。するとすっかり荒野に成り果てた地面をすべるようにして急旋回、土煙が舞い上がる中、あの猪の周囲の地面が額にまとわりつき一本の角に変化した。     なるほど、あれがあのジャイアントアースボアの使用する土魔法ってわけか。それにしても名前長いな。  で、また鼻息荒くさせて突っ込んでくる気満々だな。相手は猪突猛進に加速まで持っているから突撃のスピードも威力も高い。  普通に考えれば見てから避けられるものでもないが。 「その角で貫いてしまえ!」  マビロギの命令に忠実な猪は、再び俺に向けて加速。だが―― 「土遁・奈落落としの術!」 「へ? うわぁああぁあああぁ!」  印を結び、地面に片手をつけたその瞬間、突進してきたジャイアントアースボアの進行上に穴が生まれ、そのままご主人様と一緒に真っ逆さまに落ちていった。  うん、まあ奈落落としと言ってもようは落とし穴だからな。  でも、それなりに深く掘ったし暫く這い上がれは―― 「よくもやってくれたなぁあぁああ!」  と、思ったら吹き上がる風に乗って見事に戻ってきた。そういえばこいつ四属性の魔法が使えるんだったな。面倒な奴だ。でも猪は駄目だったか成仏しろよ。 「ナパームレイン!」  すると、再び空中から無数の火炎弾による一斉爆撃。初撃に見せた攻撃もこの魔法だったわけだな。 「風遁・神風の術――」  だが、一度見せた技、しかも通じなかった魔法を繰り返したところで結果は同じ。まあ、今回は別の忍術で対応したけどな。  そして俺が印を結ぶと同時に周囲に強烈な突風が発生、迫る爆撃が全て風の影響で軌道を変え、俺を避けるようにして次々と着弾していく。  あ~あ、また荒れてるよ。自然は大事にしないとな。 「な、こ、こいつ――」  地面に着地していたマビロギが若干おののいている。さて、俺も一つお返ししておくかな。 「火遁・烈火連弾の術」  印を結ぶと、俺の周囲に無数の火の玉が生まれ、それを一斉にマビロギに向けて発射させた。 「くっ! ストーンウォール!」  すると今度はマビロギの魔法によって石の壁が地面から現出。俺の忍術を全て受け止めた。  へ~やっぱ魔法には忍術と似たようなものは多いな。 「ロックジャベリン!」  すると、向こうも負けじと詠唱した後魔法を行使。今度は石の槍が大量に生み出され、俺に向けて連射された。 「どうだ! 僕ぐらいになれば一度の魔法でこれだけの量を発動できるのさ!」  そう言われてもな。 「土遁・石壁の術!」  俺は俺で石の壁を生み出し、相手の魔法をすべて防ぐ。すると、マビロギが驚きの声を上げた。 「お前! 僕と同じ四属性魔法の使い手か!」    いえ、違います。忍者です。 「くっ、しかもさっきから聞き取れないわけのわからない魔法ばかり使いやがって……」  うん、忍術は普通に日本語で使ってるからな。それはお前たちには理解できない言葉にしか聞こえないだろう。 「だけど――油断したな。僕の本当のクラスは――魔物使いさ! やれ、シャドウウルフ!」  すると、マビロギの声に合わせて、突如四方八方から闇と同化していた黒い狼が襲い掛かってきた。  マジか! こいつ、魔物使いだったのか! まさか、まさかこんなに大量に魔物を使役していたなんてーーーーーーて、うん知ってた。 「雷遁・放電の術」 『キャウン、キャウン、キャウン、キャウーーーーン!』  そんなわけで、雷遁で全身から放電した。この術は手から放電とか部位単位でも可能だけど、熟練すると全身からデンキウナギのように放電できるようになる。  しかもかなり強力な電流でな。おかげで魔物とはいえ一溜まりもなかったようで、黒かった狼がプスプスと焦げ臭い匂いを撒き散らしながら消し炭のようになって地面に倒れた。 「な!? 馬鹿な、雷の魔法までお前! 使えちゃうのかよ!」  いえ、忍術です。 「くそ、中々やるな。だけど、僕を殺そうとしても無駄だぞ。僕はそう簡単には死なないからな」  うん、それも知ってた。密かに看破済みだしな。魔物にダメージを肩代わりにさせるのも知ってるし何より―― 「安心しろ、殺しはしねーよ」  俺は悪っぽくそう告げ、再び印を結び―― 「土遁・石牢の術!」  地面を叩きつけ、忍気を流す。放出した忍気は地面を伝い、マビロギの真下で展開し土の性質を変化させ石と化し、マビロギを包み込むようにくっつき合い閉じ込めた。 「な、なんだこれは? どうなってるんだよ!?」  中で魔物使いのあいつが喚いているが気にしない。あいつの魔法はそれなりに強力だが、看破し戦ってみたことで大体の力は理解した。  この頑強さの石牢なら、そう簡単に壊れる事はないだろう。大体帝国の関係者を殺すわけにいかないしな、どう考えても後々面倒な事になるし。折角盗賊だって事にしたのも意味がなくなる。  さて、後はさっさと引き上げると―― 「クソ! 出せ! 出せよ! 何だよここ! 狭いよー暗いよー!」    ……うん? 「うぇええぇえん、怖いよ~狭いよ~出してよ~パパ~ママ~ふぇえぇえええん」  ……あいつ、もしかして閉所恐怖症だったりするのか? だとしたら、何かちょっと悪いことしたか。  でもまあ、この術は三十分もすれば消えるしな。中の空気もそれぐらいなら持つだろうし、うん、まあ頑張れ。  そんなわけで、俺はその場を離れ、来たときと同じように気配を消しながら無事自分の部屋に戻り分身と入れ替わるのだった――
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