第二十一話 気になるクラスメートは……

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第二十一話 気になるクラスメートは……

 ユウトとマイの対決は、最終的にユウトの勝利で幕を閉じた。どちらが勝っても負けてもおかしくない、いい勝負だったが、最終的にはマイの居合を読みきったユウトが首に木剣をあてたところで、マイが参ったと告げて終わりになった。  この戦いが終わった後はカテリナも満足気だった。流石勇者殿だと賛辞しつつ、マイにも見たこともないような絶技と褒め称えていたし。  姫騎士からみてもこのふたりはかなり出来上がっているといったところかもしれない。  ケントもそうだが、このレベルになると教える方も大変だろうな。  ま、マグマが面白くなさそうに睨んでいるけど。  う~ん、正直言えば客観的に見ればマグマだって悪くはない。ただ、やはり能力に振り回されている感はあるんだよな。爆裂に頼りすぎているのはケントとの戦いでもよく判る。  ただ、最後に見せたロケットジャンプみたいな戦法など、咄嗟に見せる行動には目を見張るものもあるのは確かだ。  まあ、流石にあいつを応援しようとは思わないが、ケントやユウト、マイを抜けば素質はかなり上位の方に来るだろう。  ちなみに忍者の俺は最初から数に入れていないけどね。いや、勿論油断は出来ないけどさ。  それはそうと――クラスの連中はやっぱ調子がいいというか、したたかというか、ユウトとマイが爽やかにお互いを健闘し合ったのをみて、すっかりヘイト発言も鳴りをひそめてしまった。  正直、さっきまで文句言っていた連中が、俺はずっと凄いやつだと思ってたんだよ! とか言いながら握手を求めていたのには目を疑った。  そしてそれに素直に応じるユウトにもな。あそこまでされてよく平気だな、ま、俺も人のこと言えない部分があるけど。  で、その後も模擬戦は続いていった。流石にあの三人ほどの実力を持ったものは出なかったが、中でも気になったのは結構いたな。  先ず男子なら水風 良(みずかぜ りょう)きのこカットでブラウンの髪をした男子で、一見するとあまり目立たないタイプ。  だけどそのクラスはかなり希少らしい自然祭司。扱う魔法は自然魔法らしく、自然を自由に扱う事が可能らしい。  模擬戦では石畳に茂った苔を上手く操り、分裂させて舞わせていた。ただ、それ自体はちょっと鬱陶しい程度な為か、試合では負けていたけど。  とは言え、成長次第ではかなり強力な存在になりそうだ。    後は弓塚 秀治(ゆみづか しゅうじ)も逸材だな。眼鏡をしているいかにも秀才といった容姿で、実際学校の成績も常にトップだったな。  そんなシュウジのクラスは魔弓士、つまり魔法の力を矢に込めることが出来るクラスだ。  そしてシュウジもクラスの中ではユウトやマイ、ケントに近い存在。つまり元々の実力が伴っている希少な男子だ。  何せシュウジは弓道部のエースだからな。当然弓の扱いに長けている。その上頭もいいとなれば、魔法と弓を融合させた魔弓士になるのも判る気がする。  そして、色んな意味で気になるのは朱天 童心(しゅてん どうしん)だ。    見た目には日焼けした褐色の肌が特徴の、なんというかチャラい男といったところなんだけどね、おまけにクラスも探険家とそこまで珍しいものではないみたいなんだけど――何かを隠しているようなそんな気配がする。  一瞬、看破の術を使おうかとも思ったんだが、なんとなくそれも躊躇われてやめた。観察している分には色んな女子に声を掛けて回ってるナンパな男ってところなんだけどさ。  試合もあんま真剣味が感じられず、適当なところで負けを認めて終わらせていたしな。  で、似た系統というか、正直雰囲気は全く逆で、何を考えいるのかよく判らなくて不気味という意味で気になるのがふたり。  そのうちの一人は魂 下場根(こん かばね)。クラスが死霊術士というのがまたなんとも言えないんだけど。  そして扱う魔法も死霊魔法――試合で見せたのは、兵士から借りた犬の骨を使ってのスケルトン化。つまりスケルトンドッグを作り上げたわけだが――本人に全くやる気が感じられず、骨犬一匹だけに任せて全く動こうとしなかったのでそこをつかれて負けていた。  とは言え、死霊術士というのはやはり気になるところだ。本当、何考えているがよくわからないやつだが。  そういう意味ではもうひとり、根蔵依 亜覚志(ねくらい あさし)も中々の物だ。  アサシはユウトが最初皇帝に意見したときから一人ブツブツ文句を言っていた男だけど、クラスが暗殺者と判明してから色んな意味で雰囲気に変化が出た気がする。  いや、常に独り言のようにブツブツ言っていたり、そういった根幹的な部分は変わらないんだけどな。  ただ相手を寄せ付けないような負の感情が混じったオーラがやたらと漏出している気がする。  何より、アサシの対戦相手はあのキュウスケだったわけだが――勝負が一瞬で決まったのも注目すべき点だ。  勿論キュウスケも特殊なクラスで、しかもまだ何も吸収出来ていない状態だからステータス的には上位の生徒に落ちるというのはあるんだが、にしてもあの気配の断ち方は絶妙すぎる。  俺だからあの状態のあいつを捉えきる事が出来たけど、下忍レベルだと見きるのは厳しいだろうな。中忍クラスでもかなり怪しい。  それほどまでの代物だ。忍者でさえそれなんだから、当然観戦していた連中には何がおきたかさっぱり理解できなかったことだろう。    勿論キュウスケは特にだ。何せ開始の合図とほぼ同時に姿が消えその直後には背後に回ったアサシが首にナイフ、まあ実際は木製のナイフに似たものだが、それを当てられていたんだから。  これが暗殺者のスキルを組み合わせたものなら中々に大したものだが、それにしても妙に板についているというかそんな気もする。  まあとにかく男子で気になるのはここまでと、後は当然先に試合を終えていたユウト、ケントは当然、素行の良い悪いを覗けばマグマやガイからもセンスは感じる、キュウスケはかなり特殊な上、試合では全く動けなかったからこれからってところだろうけどな。  後はデクか――最後に見せたあれは狂戦士の可能性を感じたがな。勿論本人が使いこなせなきゃ仕方ないんだけど。  後は女子だが、先ずは宝塚 美姫(ほうづか みき)。クラスのアイドル的存在でハーフということもあってか整った顔立ち、スタイルも良く出るところは出ていて引っ込むところは引っ込む女子からすれば理想的なプロポーションを誇る。   読者モデルとしても何度か雑誌に載ったらしいな。まあ、勿論注目しているのはそこじゃなくてそのクラス。  換装戦姫というかなり特殊なクラス持ちで、装備品によって様々な恩恵がある上、喚装によって自在に装備を変えられるらしい。  育ち方によっては戦力としては十分だろう。そういえば女子には変わったクラスが結構多い。    鐘紡 輝美(かねぼう てるみ)もその一人で、化装士というクラス持ちだ。  これは施した化粧でステータスを向上させたり様々な効果を付与できたりするクラスなようだ。自分だけではなく、仲間も化粧の恩恵が受けられるから支援役として役立ちそうだ。  本人も化粧が好きみたいだし、ちょっとケバい感じもあるけどそれが興じたのかもしれない。  人形 愛(ひとかた あい)も人形使いというクラス持ちだったな。模擬戦でもゴーレムを作り出して戦わせていた。  後々様々なゴーレムを作れるという点では、今後に注目ともいえるかもしれないけど、彼女は別な意味でも注目されていたんだよな。  何せアサシが勝利した後も、彼女が試合を終えた後もアサシに近づいていって笑顔で話しかけていた。  それにクラスの多くも結構驚いていたようだ。アサシはもともとあまり人と関わり合いになるタイプではなかったらしいし、向こうでは唯一一緒にいる所を見たのはマグマで、ただ陰でパシリみたいな事をさせられていたって話だったしな。  正直俺はクラスの交友関係とかには殆ど興味なかったから良くは知らなかったけど。まあ、そんなわけであまりアサシと接しようという生徒はいなかったようだ。  だけど、そんなアサシにアイは積極的に接していっているから驚いているんだろう。  まあ、でも理由はわりとはっきりしている。アイは体型で言うとぽっちゃり系で、これは真の意味のぽっちゃりといったところで太めでは決してないんだろうけど、コロコロしていて丸っこい顔の愛らしい女子ってところだ。  そんな彼女なんだが――ご飯はよく食べる。その為か、宮殿で出される食事だけじゃ物足りなさそうにしていることが多かったんだが、そんな彼女とは逆でアサシは食が細いらしいらしく、出された食事の半分も手を付けず残してしまっており、結果的にアイがアサシから余った食事を分けてもらったことが切っ掛けで今に至るってわけだ。  なんかそう考えると餌付けみたいだな。    まあ、彼女についてはそんなとこだな。アサシは色々気になるところもあるけど、別に誰が誰と仲良くしようが関係ないし。  後は、あの親衛隊、マイは既にわかりきっているが、音梨 玲奈(おとなし れな)も中々だ。元々スポーツが得意な彼女には身軽な動きが特徴でもある哨戒士が良く似合う。  後は真動 魔緒(まどう まお)も魔法全般に精通する魔導師というクラスは期待が持てるだろう。  ただ、それ以上に気になったのは――このマオと対戦した黒井 美沙(くろい みさ)だな。ロングの紫髪が特徴の女子なのだが、彼女のクラスは魔女。本人と妙に雰囲気がマッチしたクラスだ。  この勝負、結果で言えばマオが勝利した。ミサ曰く、魔女は魔法を行使するにも触媒が必要で直接戦闘には向かない。  ただ、それでも使い魔召喚で一匹のカラスは呼び出したりしていたか。  ただ、カラスはほぼ偵察用に近く、大した攻撃はできず、結局魔法を受けてギブアップした形だ。  そう考えると中々扱いづらそうなクラスにも思えるが、ただ触媒があったらどうなるのか? などこれも中々に謎の多いクラスだ。  あっと、忘れてはいけないのがチユだな。そして親衛隊のもう一人、木崎 加古(きざき かこ)。このふたりが今まさに目の前で試合を行っている。  正直言えばこれが最後の試合みたいなものだ。みたいなというには理由があるけど。  まあとにかく、二人の対決は――全く始まらなかった。何せチユはクラスが聖女、カコも付与術士だ。そもそもからして前にたって戦うタイプじゃない。  それでも、何かあったときの為に身を守る術ぐらいは心得ていたほうがいいというカテリナの話もあって、互いに杖で構わないから戦ってみてくれと言われたんだが――  対峙してはいるが、お互い全く手を出さず、終いには涙ぐんでしまった。うん、こりゃダメだ。そもそもふたりとも人を傷つけられるタイプじゃない。  カテリナもこればっかりは仕方ないな、といった様子で、互いに今現在得意な魔法を掛け合ってくれということで話がついた。  結局、チユは回復魔法を見せ、カコは属性を付与する魔法を見せた形だな。  属性付与に関しては掛け方によって同じ属性でも違いがもたせられるようで、例えば土の属性だと、魔力の回復速度が上がるようになったりといった効果もつけれたりするようだ。  勿論どの程度使いこなせるかはカコの頑張り次第だろうけど。  と、いうわけで、これでクラスの三十八人による模擬戦が終わった。  正直これだけでもかなりの時間が過ぎたんだけどさ。ま、模擬戦はこれで―― 「さて、ではこれで最後だな。シノブ、前に出て来るがいい」  終わり、な筈なかったか。そんな甘くはないよな~やっぱり。
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