第二十六話 仮面シノビー

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第二十六話 仮面シノビー

 俺としたことが、思わずそんな事を口にして、決めポーズまで取ってしまった。何やってんだ俺!  くっ、なんとなく頭のなかに子供の頃見ていた宇宙忍者刑事シノビダーが想起されて、そっからちょっと変えた名前を言ってしまったんだ。  てか何だよ仮面シノビーって! ヤバい、恥ずかしい、穴があったら入りたい。 『シノビー……かっこいいです!』 「……はい?」 『すごくかっこいいです! ドキドキしました! 何かこう、胸が熱くなりました!』 「そ、そうか、喜んでもらえて何よりだ……」  うん、とは言え、俺が言うのもなんだが、どうかしてるぜ!  結局俺はその後、完全に仮面シノビーとして認識され、プロフィールやら何やら根掘り葉掘り聞かれてしまった。その都度、俺はシノビーとしての設定をどんどん追加していくことになる。  絶対に後で黒歴史になるレベルでな! 『……クスン、シノビーさんも大変だったのですね』  そして俺は、今丁度、生き別れの妹と再会するも、敵の闇黒忍者軍四忍王の一人ハトリアクゾウから身を挺して俺を守り、涙の別れを終えたという設定を聞かせたところだ。 『そ、それで、その後はどうなったのですか!(ハラハラドキドキ)』  括弧でドキドキを表現するとは中々芸が細かい姫様だが、流石に俺もこれ以上のんびりしていられないな……いい加減戻らないと。 「悪いな姫様、俺にも任務があって」 『ハッ! この世界に逃げてきたトクガーワを探すという重要な任務があるんでしたね!』  うん、だからそれそういう設定だからね。  まあそれはともかく―― 「その、申し訳ないんだが、ここから出るのに少し協力してもらっていいかな?」  今さっき出ようと思った時は、カテリナの声を使って扉を開けさせ、適当に気絶させて逃げようと思ったけどな。  この状況なら彼女に協力を仰いだほうがスムーズに進むだろう。 『あ! そうですね外にはピサロがいますから……判りました。ベルを鳴らせば様子を見に来ると思いますのでその隙に、任務がんばってくださいね!』 「あ、ああ、そうだな」  これで信じちゃうんだから純粋な子なんだろな。全く同じ姫様でもイグリナとは大違いだ。ちなみに聞いた話だと姉は一番上のカテリナと次女のイグリナで、シェリナは一番下の妹になるらしい。  皇女でみれば第三皇女って事だな。それなのにこんな場所で幽閉されるなんてな……。 『……それと、また時折続きを聞かせにきてくれますか?』 ――そんな小動物みたいな目で訴えられたらな……断れないだろ。 「ああ、夜になるかもしれないが、また来るよ」 『うわぁ、楽しみにしてます! そうですよね仮面シノビーは夜でないと体の中に存在するシノビコアのエネルギーが』 「と、とにかく! またくるから!」  ヤバい! その設定改めて聞くだけで死にそうだ! とにかくダメージが少ないうちに立ち去ろう。  シェリナがベルを鳴らした。するとこれだけの高さの塔にもかかわらず、ダダダダッ! と凄まじい勢いで足音が鳴り響く。  駆け上がってきてるのか。あのピサロって奴、体力半端ないな。 「何かありましたっすか! 姫様!」  そして扉を開けて飛び込んでくる。一瞬シェリナの肩がビクって震えたぞ。  勢いありすぎて。  そしてシェリナは、ゴキブリが出たの! と書いてごまかしてくれた。それは嘘にしてもゴキブリか。どこにでもいるんだなゴキブリ。  にしても、五十メートルを超える高さを登ってくる気合の入ったゴキブリがいるのかって話だけど。  まあいいや、とりあえず隠れ身も使用したし、今のうちに――  仮面シノビーが上手く部屋を出れたことを祈るシェリナ。そして、ゴキブリはえ~と、と書き込んでごまかすが―― 「……どうやら、もっと大きなゴキブリがいたようっすね」 『……え?』 「こっちのゴキブリは後で見るっす! 姫様は扉と鍵を閉めて、おいらが戻るまで絶対に開けちゃ駄目っす!」 『あ、あの、あの、あの……』  だが、戸惑うシェリナを他所に、急いで部屋を出て階段を駆け下りるピサロであった―― ◇◆◇  シェリナが折角脱出経路を確保してくれたので、俺は体遁を使って急いで塔を駆け下りた。  とは言え、爺ちゃんや親父の言っている事を律儀に守って時空遁の使用を控えていたけど、地球とは違うんだし、今後はもう少し考えたほうがいいかもな。  特に今回みたいな場合、時空遁が役にって、うぉ! 「待つっす! 逃さないっすよ!」  塔を出て駆けていた俺の背中に、そんな声が届くが、それより早く投擲された槍が、俺の横を抜けていった。とっさに身を翻したから良かったけど、そうじゃなかったら突き刺さるコースだぞ! 「むぅ、やはり誰かいるっすね! でもおいらの槍からは逃げられないっすよ!」    マジかよ……こいつ体遁で強化して駆け下りた俺に追いついたのか。ただの番兵かと思ったんだけどな。  しかも、隠れ身で完全に風景と同化し、気配まで消している俺に気づいている様子。  更に――槍が戻ってきた! 俺はそれも躱すが、戻ってきた槍をピサロが軽々とキャッチする。 「おいらの槍からは、逃げられないっすよ!」  そしてそんな事を宣言した。参ったな、こいつ中々やるタイプかもしれない。  とりあえず、看破の術! ステータス 名前:ピサロ ロザール 性別:男 レベル:28 種族:人間 クラス:槍脚士 パワー:290 スピード:520 タフネス:180 テクニック:420 マジック:0 オーラ :320 固有スキル 槍操作、脚槍術 スキル 気配察知、虫の知らせ、槍強化、速攻、連突、三方突、槍高飛び、竜襲落、蹴突槍、真空無双独楽、反動三槍蹴、捻蹴槍 称号 槍使い、蹴撃者 装備品 ショウズリ 魔装具の槍。先端からは超音波が発せられており、姿が見えない相手でも超音波で位置を知ることができる。 固有スキル ・槍操作 槍を投擲したあと自由に動かすことができる。 ・脚槍術 脚で槍を操る妙技。 スキル ・気配察知 気配を察知できる。 ・虫の知らせ 何かと予感が働くようになる。 ・槍強化 槍が強化される。 ・速攻 攻撃速度が上がる。 ・連突 連続で突きを決める。 ・三方突 三方向から同時に突きを仕掛ける。 ・槍高飛び 槍を使って大きく飛び上がる。 ・竜襲落 竜を強襲するための技と言われているもので、跳躍し頂点から一気に落下しての体重を乗せた突撃。跳躍時の高さによって威力が変化する。 ・蹴突槍 突いた槍を更に脚で押し込む。 ・真空無双独楽 槍を突き立て支点にし高速回転しながら蹴りを叩き込む。 ・反動三槍蹴 槍のしなりを利用して蹴りを見舞い、それを三回連続で行う。 ・捻蹴槍 脚を捻らせ蹴りを放ち、その回転力を槍に伝えて相手を貫く。 称号 ・槍使い 槍を自在に操れる。 ・蹴撃者 多彩な蹴り技を誇る。  以上か――なるほど。気配察知だけなら流石にみつかるわけないと思うが、そこに加えて、虫の知らせと魔装具から発せられる超音波が効いているってわけね。 「【竜襲落】っす!」 「うわっと!」  そんなことを思っている間に槍を使って空高く跳躍したと思えば、槍を構えたままピサロが落下してきた。  こっちは姿消してるのにピンポイントで狙ってきたな! 後ろに飛んで躱しこそしたけど、地面が隕石落ちたみたいに凹んだぞ! たいした威力だな。 「手応えがないっすね! だけどまだまだっす!」  今度は片手突きか。だけど、それじゃあ全然届いて―― 「どりゃっす!」  と、思ったら脚で押し込んできやがった! これが【蹴突槍】かよ。 「どんどん行くっすよ!」  そして脚で器用に突きを連打してくる。本当に足癖が悪いなこいつ。  とは言えだ、いい加減俺も付き合ってられないしな。ここは―― 「姫様を狙う不届き者は! おいらが絶対許さないっす!」  ……そうか。番兵とはいえ、こいつはこいつなりにあのシェリナの事を守りたいと思ってるって事だな。  ふぅ、だったら、無理して戦う理由もない。  なら――時空遁・瞬間移動の術! 「え? な、なんすか! なんで突然、槍が反応しなくなったっすか!」  後ろからピサロの叫ぶ声が聞こえた。俺は既に離れた小高い丘の上にいる。ま、流石の超音波も瞬間移動されたら見つけようがないよな。  それにしても時空遁はやはり便利だ。尤も忍気の消費量が多いのが欠点ではあるけど。  それと瞬間移動ではそこまで長距離は飛べないというのもある。最長でも五十メートル程だし、高さでいうとそこまで高い場所に移動は出来ない。このぐらいの丘なら問題ないがもっと高い山とかは無理だ。  勿論、長距離専用の時空転移の術というのもあるが、あれは予め行き先にマーキングをしておく必要があるのだ。    そう考えると、咄嗟の状況なら瞬間移動の方が便利は便利だ。まあ、使った後は隠れ身とか掛け直さないといけないんだけど。  それにしてもあいつ――少なくともサドデスとは比べ物にならないぐらい強かったぞ。騎士という雰囲気でもなかったが……面白いものだ。  まあとりあえず、今日のところは引き上げて、後は明朝からだな――
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