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延々と行われるかと思われたそれは、もう一人の執行官の怒声によって遮られるのであった。
「いい加減にしろ! お前には遺書を書く猶予もやらん。即刻執行だ。早くこれに着替えろ」
それを聞いた執行官はこっそり舌打ちをすると、如何にも不服そうな表情で後退した。彼女も彼女で、激しい怒りを湛えながら注意した執行官を睨む。
しかしやはり、彼女はそれ以上の抵抗をしなかった。即刻執行と言い渡されても尚。多くの死刑囚は与えられた最期の猶予に精一杯甘んじて煙草を吸ったり、果物に舌鼓を打ったりしたがるというのに。彼女には、そういった意思や願望がまるで感じられないのだ。
稀に従容として執行を受け入れ、絞首台に立つ者もいるが……。
手渡された白装束に着替える彼女を見て、もう一人の執行官は心底不思議がるのだった。
「これでよろしいかしら」
「ああ。じゃ行くぞ」
――絞首台へ、逝こう。
彼女は脳内でそう呟き、執行官の後に続く。横のカーテンが開かれれば、そこはもうすぐにある。
――無機質な、絞首台。
手錠で拘束され、布で視界を覆われた彼女の前には輪っかになったロープが待ち受けている。
手際良く足首を拘束し、布が外れないように彼女の首にロープが巻かれた。
首へ確かに感じるロープの感触。真っ白な世界を遮断するかのように、彼女は目を伏せる。最期の時に流れるは――やはり、愛する人の顔と、彼を虐げ迫害した卑劣な者達への憎悪だった。
奴らが彼に何をしたか。
彼を失った虚無感。
全てを知った瞬間の絶望。
報復の為の暗黒の日々。
復讐を果たしても尚消えない怒りと憎しみ。
許さない。赦さない。誰が何を言おうと、わたしは奴らを許しはしない。わたしが裁かれようがそうでなかろうが、それは永遠に変わらない。
大和様を痛め付ける者傷付ける者蔑ろにした者無視した者そしてそしてそして――――――――無惨に残酷に残虐に惨殺したあのゴミクズ共。
殺しても殺し足りない。一億回でも蘇らせて、また同じ様に殺してやらないと気が済まない。それだけのことを奴らはやった。これは当然の報いだ。
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