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一体何だと言うのか。まさか――泥棒?
カーテンをほんの少しだけ開き、外を覗いて見た。すぐに通報出来るように携帯電話を握り締めて。
しかし、カーテンの隙間から見えた光景に、大和は驚きの余り目を見開いた。
「……な……史星!?」
静かな夜道。家の敷地外から、石をぶつけている史星の姿がそこにはあった。大和は反射的にカーテンを全開にし、逸る思いで窓を開ける。秋風が入り込み大和の髪を、カーテンを靡かせた。
「史星、こんな所で何をしてるんだ? もう七時過ぎてるぞ。早く帰らないと……」
「大和様! やっと気付いてくれましたね。大和様がどうしても心配で会いに来ましたの。中に入れて下さる? 今家に一人なのでしょう?」
大和の姿を認めると、史星は心底嬉しそうに言った。学生鞄を持ち、制服を着ていることから、恐らく学校帰りなのだろう。だが、史星の家がある世田谷区とここ鳥越市はそれなりの距離がある。大丈夫なのだろうか?
大和の心配を余所に、史星は家に入れて欲しいと言い出した。確かに今家には自分以外誰もいない。常夜灯のみで人の気配の薄さからそう判断したのかもしれないが……。大和は少し迷った末に、史星を招き入れることにした。いつまでもここで会話をする訳にもいかないし、何より女の子を寒空に放置するのは頂けない。
「……分かった。今開けるから、玄関に回ってくれ」
「嬉しいわ。大和様の家……久し振りね」
×××××××
家に上がった史星は――開口一番大和の部屋に行くことを提案した。一瞬戸惑う大和だったが、史星が自分の家族を嫌っていることを思い出し、二つ返事で了承する。嫌う理由は勿論、大和を邪見にしているからだ。
飲み物とお菓子を台所から引っ張り出し、二人は部屋へと入った。
「……汚くて、済まない」
「気にしないで。わたしがいきなり押し掛けたのだから……。今、叔父様達は何処へ出掛けていますの? ――大和様一人を置いて」
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