ワタシノシラナイアナタ

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――頭が真っ白になった。 史星が何を言ったのか、中々理解出来なかった。 好き?愛してる?誰が、誰を? 何故?どうして?何時から?何時から――――――――――――――――――――。 呼吸の仕方を忘れてしまいそうになるくらいの衝撃。大和は熱を帯びた史星の眼差しから目が離せなくなってしまった。否――離させてくれなかった。史星が。 ぺたり、身体に触れた手。もう一方の右手は大和の頬に伸びる。触れられた所が熱い。部屋の中はこんなにも寒い――暖房を入れていない所為なのだが――のに、それに逆らうように身体は熱くなる。頭がぼんやりする。もう――何も考えられなくなっていた。ほんの少しの身動きする音すらはっきりと聞き取れる。衣擦れ、吐息、時計の秒針。 「大和様…………」 何か、言いかけた。自分が。しかし気のせいだったようで、只掠れた息が(こぼ)れるだけだった。眼前に迫るは――月光にほんのり照らされた、史星の綺麗な顔。 そして、大和と史星の唇が、重なり合った。 ××××××× ――少し、休憩を取らせて欲しい。そう言って終は席を立つ。真っ先に冷蔵庫へ向かい、水を飲み干した。 その間、誰一人として口を開かなかった。彼から告げられた二人の過去の話を、誰も整理出来なかったのだ。気まずい沈黙の中、柊と綺更はバツが悪そうに視線を交わしている。冬実はと言えば、苛立っているような……不快感じみた感情を隠すことすら思い浮かばないようだ。露骨に眉を寄せている。 当の羅維納は――自分でも例えようのない妙な感覚に、抵抗も出来ぬまま溺れることしか出来なかった。 大和、否終と史星は従兄妹同士。恋人ではないし、何より終自身がそう言っている。恐らくこれは――史星の一方的な片想いだろう。 だが、それでも羅維納はこのことにいい感情は持てなかった。あくまでも恋人のように振る舞い、あまつさえ見せ付けて来るのだ。余程すぐにでも終をモノにして、本当に恋人同士になってしまえる自信があるに違いない。 そんなのって――――
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