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ひたすらに終の気持ちを無視した、独善的な行為ではないだろうか。自分がそうしたいから、そうする。只、それだけで相手の気持ちを聞き入れようとしていない。好きだから、愛しているから、そう言っていれば何でも許されるなんてことはないのだから。
それにしても分からない。
好きって何だろう?愛って何だろう?
誰かを愛するとはどういうことだろう?
数々の疑問点が羅維納の頭を満たして行く。
今までこんな風に、愛とか恋について考えたことはなかったかもしれない。この世界では……色恋沙汰を語ること自体がタブー視されているらしく、誰かが誰かにそのような感情を抱いても公にするのが躊躇われているのだった。
人間界では色恋が当たり前のようにあって、誰もが恋愛を謳歌出来る。そこに貴賤や身分はなく、誰かを好きだと言っても罰せられたりしない。
周りにいる仲間達を視界から追い出すように身体を倒して、天井を見上げる羅維納。広がるは白い天井と今は休息中の蛍光灯のみ。即席で作り上げた自分の世界に入り込み、終の話を思い返した。
浮かんだのは――二人の接吻。
羅維納には接吻に対して碌な思い出がなかった。
今でも思い出すとムカムカして、不快感が募る。
しかし今回の件は――――それとは又別の意味合いで、嫌な感じがしたのだ。その意味合いと言うのがいまいち理解出来ず、羅維納から冷静な思考と言葉を奪うのだった。
「あの人とのことは大体分かりましたけど、終さんがこの世界に来るきっかけになった理由――恨みは、あの人が原因ではないんですよね? もしかして……話の中にあった終さんの家族、ですか?」
寝転がったままの羅維納の耳に飛び込む、綺更の言葉。綺更と柊、そして冬実は知らない……終の恨み。現時点で知っているのは、羅維納と、今は亡き仲間――神成三繼期唯二人。後考えられるのは、先代死神界最上の位、終夜くらいだろうか。
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