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自分の『未来』『末路』を知ったのは殺される前日のことだった。たまたま夜中に目が覚めて、水を飲もうと階下に降りた時。
既に寝ているとばかり思っていた、家族の恐ろしい会話を耳にしてしまったのだ。声を殺している為詳しい情報は手に入れられなかったが、大和の能力が原因で倖南が学校で苛められている……と言ったものだった。
ここ迄ならまだいい。問題は――その後だ。
倖南の悲痛な訴えを受けた両親が、大和をこの世から消してしまおう――――そう言い出したのである。
血の繋がった家族に殺される。その恐怖は大和をより深い絶望へと追いやった。永遠には逃れられないと分かっていながら、それでも大和は抵抗を試みる。しかし必死の逃避行は、繁華街で警官に捕まったことで無様に終わりを告げたのだった。
そこから先は――地獄の一言に尽きる。
一心不乱にぶつけられた罵詈雑言。
生きた人間の凄まじい狂気。悪魔のような笑み。
憤怒。世間体。体裁。逆恨み。理不尽な断罪。
積み重ねられた家族の怒りと憎悪は――全て自分に向かって行く。
振り上げたチェーンソーは四肢を捉え、激痛を伴いながら切り落とされた。血にまみれ、涙と鼻水と唾液でぐちゃぐちゃになって行く自分の顔。絞り出す声が聞き入れられることはなく、身体中に釘を打たれた。
『早く死ねよ』『俺達の苦しみを思い知らせてやる!』『あんたなんか、死んじまえ!』『こんなの、自分の子だなんて思いたくもないわ!』『お前の所為で倖南は苛められているんだ!』『責任取って死んでよ?』…………………………吐き付けられる憎悪の呪詛は――いつしか大和の心に、理不尽さ故の、同等の恨みを芽生えさせた。
只悲しみに溺れるだけでは終わらない。
家族の怒りが、自分達の体裁を守りたいからこそ生まれたのだと、知ったから。思い通りに行かないことがあれば、とりあえず憎たらしい大和の所為にすればいいと思っているのが分かったから。それは――何処までも下らない鬱憤晴らし。
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