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そんな下らない連中に――――自分は殺された。
ずっと抑え込んでいた黒い感情が、死の間際に増幅して行く。
憎い。憎い。憎たらしい。逆恨みでこんな風に殺したことが許せない。死ぬ迄にどれだけ自分が痛く苦しい思いをしたのか――分からせてやりたい。呪ってやる。恨んでやる。何故自分がこんな目に遭わなくてはいけない?何も悪いことはしていない。只、特殊な能力を生まれ持っただけで。只……それだけだったのに。
真に死ぬべきは――――――コイツらだ!
復讐する。絶対に。同じような思いをさせてやる。
そして思い知ればいい。この痛みを。この苦しみを。
大和の魂は真っ黒な怒りと憎悪、恨みに燃え盛る。静かな悲しみだけでなく、激しい恨みを共に孕んだそれは――死神界へと向かった。
新しい名前と死神と言う肩書き、そして使命を与えられた彼は生まれ変わる。
今の、榊終として…………。
死ぬ時に――――史星の顔を思い出すことはなかった。接吻の一件があってから、大和は完膚なき迄に史星の痕跡を消したからだ。形に残る物だけではなく、記憶からも同様に。
だから……思い出さなかった。死神になってからも、それは変わらなかった。つい最近迄、封印していたのだろう。
しかし再度一人前の死神になって約四年頃。
彼は一度だけ、ある出来事がきっかけで史星のことを思い出していた。
ぼんやりした映像。フラッシュバックのように走る閃光。蘇ったそれは――間違いなく史星の姿だった。
その後沢山の事件があったものの、自分は何故この時のことを忘れてしまっていたのだろうか?今となってはもう分からないが、こうして現在、現実として…………史星がいる。自分の身近に、同じ死神の立場となって。
そんな自分が、今やるべきこと。仲間達に言うべきこと。
終は一度目を閉じると、心を落ち着かせるようにゆっくり息継ぎをするのだった……。
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