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「…………」
貫かれた沈黙。
羅維納達は皆一様に目線を下へと遣り、終の言葉にどう返すべきかを考えていた。
あのクールで時に冷酷で、口調もぶっきらぼうな終が、自分達に頭を下げている。それ程真剣な気持ちで頼み込んでいるのは――痛いくらいに伝わっていたのだ。終は未だ頭を垂れたまま、動かない。
心に引っ掛かるものはあったが、これ以上終に気負って欲しくなかったのも事実。羅維納は意を決して顔を上げると、出来る限りはっきりとした態度を心がけながら口を開く。
「……分かりました。終さんがそこまでするなら、私はその気持ちに応えようと思います。……只、一つ約束して下さい。あの人と付き合うことで、私達チームメイトとの関係を疎かにしないで欲しいんです」
「羅維納……」
「私も羅維納に同じ。あんたの実力と人望に免じてその申し出を受けるわ。……あんたに忘れて欲しくないのは、史星はあんたに執着染みた感情を持っていることと、その余り一緒にいる時間の長い私達へ良好な感情を抱いていないこと。それだけは肝に銘じなさい」
羅維納に続き、冬実も意見を述べる。次に発言したのは、綺更だ。
「まあ……あたし達もちょっとあの人のこと、余り知らないから……いい様に感じないのかもしれないし、いい人かそうでないかは、これから判断して行きたいと思ってます。だから……終さん、頭を上げて下さい!」
歯を見せて悪戯に笑う綺更の物言いに、場の空気が明るくなりつつあるのを感じて頭を上げた終。最後に柊が、彼の魅力の一つである柔らかな笑みを投げ掛ける。
「そうですよ、終さん。今でこそ偏見と言うか……先入観があってマイナスイメージを持ってしまってますけど、それはこれから幾らでも変わって行きますよ。だから……僕達にも、史星さんと仲良くさせて下さいね」
仲間達の発言の一つ一つを噛み締める。羅維納や冬実のように厳しめな忠告もあったが、それでも受け入れてくれたことが嬉しかった。
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