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「……ありがとう、皆」
ずっと翳りを落としていた終の顔色に、明るさが蘇る。いつもより何処か雰囲気の違う終に僅かばかりの違和感を持ちながらも、羅維納は柊のように柔らかに笑ってみせた。
――嬉しいの?それはどうして?
人間だった頃から付き合いがあった人と再会出来たから?
――あの人は、貴方の大切な存在?
辛い時に傍で支えてくれていたから?
――あの人と、どうしてまた交流したいと思うの?
貴方の気持ちを無視して自分の感情を押し付けていたのに。貴方が自分で、拒絶したくせに。……狡い。それ、狡いよ。
あの人とおんなじ、独り善がり。
私達の気持ちも、知らないで。
それ程迄に、あの人が大切?
私達チームメイトが嫌がっていても、貴方はあの人との関係を……時間を優先するの?……私達は、皆手放しで受け入れている訳じゃないのに。
「……羅維納、大丈夫? 何か余り顔色良くないわよ」
「…………え?」
ハッと我に返ると、間近に心配そうな面持ちをした冬実がいた。意識を現実に引き戻そうと何度も瞬きをすると、今度は自分がそれまで考えていた内容の恐ろしさに、身震いするくらいの寒気が襲い掛かる。思わず身体を自分で抱き締めるように、羅維納は身を縮め込んだ。
「……えー、羅維納さん! 大丈夫ですか!?」
「顔真っ青ですよ……?」
綺更と柊が口々に歩み寄る。だが今の羅維納に、受け答えをする余裕はなかった。
「……羅維納、どうしたんだ? 様子が変だぞ」
最後に羅維納の正面に立ち、遠慮がちに問う終。
しかしそれでも、羅維納は何も答えられなかった。
――自分が考えていたことが、途徹もなく恐ろしくて。自分のことが、怖くなったのだ。
こんなことを思っている自分こそが、一番独善的じゃないか。終のことも、史星のことも非難する資格なんてありはしない。まるで違う人格が生まれて、乗っ取られて行くようだ。二の腕にこびりつく鳥肌は治まることを知らない。
「……ごめんなさい、具合悪いから部屋で休みます……」
仲間達の返事を聞くことなく、羅維納は寒気に苛まれながら部屋を後にするのだった……。
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