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極力音を立てない様に扉を閉め、廊下に出た冬実。
自分でも知らない内に零れたため息は、廊下へ反響することなく消え失せた。
振り返るとそこには、腕組みをして立っている終の姿があった。
「……羅維納は、大丈夫なのか?」
――終が仲間達に史星との関係を語った後、羅維納は体調を崩して寝込んでいたのだ。彼女がいきなり寒気を訴えた理由を、終は勿論のこと誰にも話そうとしない羅維納。扉の向こう側にいる彼女は――今、一体何を思いながら休養しているのだろうか。
手段は荒々しいが、羅維納の心を読むのが一番の近道ではなかろうか。そう思った終は、早速冬実へ提案してみる。しかし――
「あんた何言ってるの?」
「あ……いや、あくまでも提案なんだが……」
冬実の冷たい視線。あっさり首を縦には振ってくれないとは思っていたが、ここ迄キッパリ言われるとは。しどろもどろになる終へ更に追い打ちをかけるが如く、言葉を続ける。
「今無理に理由を聞き出そうとすると、かえって逆効果よ。それもあんたの読心能力で強引に読もうだなんて……確かにあの子は苦しんでいるんだろうけど、その理由はあの子が私達に話してもいいと思ってくれる迄待つべきよ。多分……あんたが原因だろうけどね」
「ならば尚更……」
「ストップ」
終の言葉を制するように差し出された指先。それは終の鼻先を捉え、あえなく降参する羽目になるのだった。
「あんたの場合は私達第三者が尻叩いてやらないと何も胸の内を語ってくれないけど、羅維納は違うのよ。その羅維納があんなになっているんだから、少しそっとしてあげるのがいいわ。皆が皆……あんたと同じように、鋼の心を持っている訳じゃないんだから」
――鋼の心?
冬実が最後に述べた内容に、怒りを覚える終。
何も知らないくせに。……皆が思っている程、自分は強い心など持っていない。しかし今それを言っても、口論になるだけだ。
終は無言で冬実の手を振り払うと、せめてもの反論をするように言い放つ。
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