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「また、『俺が原因、俺が悪い』か。何も知らないのに、何故俺が原因だなんて分かるんだ? いい加減なことを言うな」
気分が悪い。そう吐き捨てると、終は踵を返して廊下を歩いて行く。……何処か、一人になれる所はないだろうか。歩きながら考え込む終の脳裏に浮かんだ、一つの場所。嗚呼、あそこならば――。
終はもう後ろを振り返ることなく、思い浮かべたその場所へとひたすら歩を進めるのだった。
「……全く、大人ぶってるくせにこういうことにはまるでお子様レベルなんだから」
段々遠退く背中を眺め、小さく愚痴を溢す。
物音一つしない女子部屋の扉を尻目に、冬実もまた廊下を立ち去った。
×××××××
「んぅ……っ」
ずり落ちないよう布団を掴みつつ、ゆっくりと寝返りを打つ。寒気も少しずつ治まって来たことで心に余裕が出来た羅維納は、今迄頭が隠れるくらいに被っていた布団からひょいと顔を出した。その様子はさながら甲羅から頭と手足を出した亀そのものだ。
……あれからどのくらい経っただろうか。頭を動かして部屋を見渡すと、冬実も綺更も留守にしているらしく、人の気配がなかった。
テーブルにはプリンとスポーツドリンクが置いてある。冬実達が用意してくれたものだろう。羅維納はドリンクに手を伸ばし、中身をぐいっと飲み干した。
「あ~、生き返る……」
半透明の液体が、全身を潤して行く感覚。
自分以外誰もいない部屋の静けさは、羅維納に考え事をさせる時間を惜しみ無く与えた。内容は勿論――自分の体調不良を招いた、妙な感情のこと。
あの時、史星のことを語る終の姿を見た時。そして、史星との再度の交流を頼み込んでいる時の真剣味のある態度。心なしか、終は嬉しそうに見えた。
羅維納には、何故かそれが不快に感じてしょうがなかったのだ。しかし――その根底にある理由が、どうしても分からなかった。この感情に名前があるとしたら、何と言うのだろう?誰かに聞いたら分かるだろうか?寝台に腰掛け、身体を縮めて項垂れる。
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