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もしも彼だったら、この疑問に、モヤモヤに答えを出してくれるだろうか。二十年前にこの世を去った――三繼期ならば。
神成三繼期。
羅維納にとっての先輩であり、チームメイトだった死神。彼は羅維納に恋心を抱き、ぎこちなくともストレートにその想いをぶつけて来た。結局……はっきりした答えも出せぬまま、三繼期は亡くなってしまったのだが。二十年経過した今でこそこうして冷静に懐古出来ているものの、当時は羅維納を脱け殻状態に陥らせる程のショックを与えたのである。
自身の目頭が熱くなり始めて行く。脳裏に蘇るは――三繼期から貰った、純粋な迄の愛情。言葉。
それにきちんと答えられなかった後悔は、今も羅維納の心に棘となって突き刺さっている……。
『気になってたんだ……初めて会った時から』
『俺様は、羅維納ちゃんが大好きだ!! 例えこの気持ちが届かなかったとしても、俺様は羅維納ちゃんを好きでいる。羅維納ちゃんを――護りたい。命に懸けても』
「……三繼期さん……」
あんなにも真っ直ぐ気持ちをぶつけてくれたのに、自分は知らんぷりして、挙げ句有耶無耶にした。自分がもっと恋愛感情のなん足るかを知っていれば。三繼期の気持ちを受け止める努力をしていれば。この心に巣食う後悔と、棘は抜けていたのだろうか。
自分もいつか――三繼期のように誰かを深く愛せる日が来る?
相手の心と向き合って、誠実に答えを出せる日が来る?
それはいつ?分からない。自分には、何にも。
記憶の中から沸き上がって来る、三繼期の笑顔。
いつも周りを元気にしてくれる眩しいそれ。
自分に答えを有耶無耶にされた時に見せた、悲しげで切ないそれ。
いつか自分に大切な存在が出来たら。その相手を深く愛せたら。今度こそ――二度と、あんな悲しい表情をさせたくない。
一筋伝う涙を拭い、羅維納は顔を上げる。
とうに転生しているけれど、もうそこにいないのは分かっているけれど。今のこの感情を、自分の想いをどうしても聞いて欲しいと思った。――亡き、三繼期に。
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