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亜人は人間社会と共生しない
ハァ……ハァ……。
雑居ビルが密集する、薄暗い路地裏。
息が荒くなっている。疲労が蓄積して、脚が絡まりそうになる。
『男』は、水溜りに足を取られそうになりながら、必死に逃げていた。
白い息を吐く口からは、獣のような白い犬歯が顔を覗かせている。よれたスウェットスーツには、赤い血染みが点々と着いていた。
時折、背後を振り返りって追跡者が居ないか確かめる。
「ちくしょう! 捕まえ……られるモンなら……捕まえてみやがれ……何としても……逃げ切ってやるっ!」
何処か遠くで、パトカーのサイレンがウァンウァンと鳴り響いている。
1台ではない……かなりの台数だろう。恐らく、その全てが『自分』を追っているのだ。
「くそっ! だが、何とか振り切……っ!」
男は、急ブレーキを掛けて足を止める。
眼の前に、ロングコートを羽織った長身の人影が立ち塞がっていたのだ。
「だ……誰だ、テメェ! 邪魔だっ!そこをどきやがれっ!」
男は、目の前に居る『人影』に向かって怒鳴りつけたが、その人影は微動だにせず、ゆっくりとコートの左懐に右腕を差し込んだ。
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