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「ああ、そうだよ! ここ暫くの吸血騒ぎの犯人は確かに俺様だよ! だがな、俺達『吸血鬼』は遥か昔から人間の生き血を吸って生きてんだよ! ……法律だかなんだか知らねぇが、それの何が悪いってんだっ!? テメエら人間だって、豚や牛をブチ殺して食ってんじゃねぇか! それと何が違うってんだよぉ!」
激高した勢いからなのか、男の体格に変化が出始めた。露出している顔や腕に、狼のような剛毛が浮かび上がる。口が前に突き出し、耳も三角に変形する。
先程までやや小柄に見えた身体つきは、隆起する筋肉でスウェットスーツが弾けそうな位に膨れ上がっていた。
『獣化』である。
「……同じだな」
ボソッと呟きながら、ハヤトが撃鉄を引き起こす。
「いつも同じだ。追い詰められた亜人が最後に吐くのは、いつも『そのセリフ』だ。……いい加減、聞き飽きたってモンだぜ」
ふぅ、と肩で息をついてから、銃のフロントサイトを男の眉間に合わせる。
「貴様……獣化したな? 人前での獣化は、判例によって正当防衛の要件を満たしている。よって……」
右手の親指で弾倉を1ノッチだけスライドさせる。カチリと小さな金属音がして、バレルの軸線上に『銀の弾頭』が装填された。
ガウウウア!!
突然、男は熊のような叫び声を上げてハヤトに襲い掛かって来た。
次の瞬間。
ドゴォォォォン……!
寂れた路地裏に、落雷のようなマグナムの咆哮が轟いた。
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