番外編: 憧れの二人

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番外編: 憧れの二人

 俺には、絶対に勝てない二人がいる。  頭が上がらないというか、憧れる人だ。 「ノアー!」  その一人が俺を呼んでいる。今日は、昼から公務がある。王妃である父様と、王子である俺、ノアの視察だ。  昔、父様が一時だけ住んでいたというその村。そこには、父様の大事な友人もいるらしい。そのため、父様はとてもこの日を楽しみにしていた。 「いた、ノア。なにしてたの。準備はできた?」 「もちろんです。ぬかりなく。父様こそ、浮かれすぎてなにか大事なものを忘れているのではありませんか」 「なっ、失礼な。浮かれてなんかないよ。全く。ノアも憎まれ口を叩くようになってかわいくないったら」  かわいさというなら、父様には勝てる気がしない。父様は、メイドたちの話によると、お姫様の身代わりとして来ていたらしい。  男が女に化けて気づかれないなんて、どれだけだ。と思うけれど、父様をみれば納得する。体つきも、顔つきもとても綺麗だ。あの頃から十数年の時が過ぎているか、変わらず綺麗だと、皆が口々に話しているのを聞く。  男にたいして綺麗だというのもおかしな話だが、父様をみれば納得できるのも確かだ。
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