番外編: 憧れの二人

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 アキトは素直じゃない。いつか父上がそう漏らしていた。  それは、体調が悪いのに無理して公務を立て続けにこなしていたことをついに父上が気づいたあとのことだった。  ああやって無理して倒れて、俺の気持ちを全くわかっていない。とプリプリと怒っていたのがおかしかった。そういいながら、何度も父様の部屋に通い、せっせと看病をしていたのも、父上の前では甘えん坊になる父様も俺は知ってる。  最近は俺も部屋が別れてしまったし、見せてはくれないが、俺が小さな頃はそんな父様を目にしていた。  無理をするのは王妃としての父様だ。父上の前でアキトに戻った父様はとても甘えん坊だ。 「結婚してるんだから、当たり前だろう」 「それが当たり前じゃない人たちもいるんですよ。俺がいた施設には、そういう親の子供もいました」  とても小さな頃の記憶。たくさんの記憶が残っているわけではない。幼い頃のことだから。それでも、父様と父上に出会ったときのことは決して忘れられない。それもあって、覚えていることもちらほらとあるのだ。 「エドワードさまが優しいからだね」 「優しいのは父様の方でしょう」 「違うよ。エドワードさまの方」  かっこいいとかたくましいとか、そういう言葉の方がしっくり来る。優しくないわけではないが、父様と父上とを比べて優しいと言われると父様の方だと俺は思うけれど。父様にとっては違うらしい。
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